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評者◆添田馨
〈嘘〉は戦争につづく道(5)――自民党の「派閥解消」なんかが問題なのではない
No.3625 ・ 2024年02月03日




■パーティー券裏金キックバック疑惑の発覚以降、自民党主導で開催された「政治刷新本部」の会合では、なぜか「派閥」の存在が問題にされているという。「派閥」がひき起こした不始末だから「派閥」の全廃が必要だというもっともらしい議論のようだが、問題の本質がそこにあるとはとうてい思えない。「派閥」からの指示が仮にあったのだとしても、違法な行為だと分かっていたなら、議員ひとりひとりがそれを拒絶すればいいだけではないか。「派閥」が解消されたとしても、議員のあいだにそうした不法金脈の隠蔽体質が残りつづけるなら、派閥解消なんかわざわざ議論する意味すらないだろう。
 “政治は数であり、数とは力であり、力とはカネである”という不文律が、この国の保守的な政治土壌にはある。仕事のできる政治家とは、多くの人を動かして現状をどんどん自分の支持者たちがのぞむ方向へと変えていく、そういう利益誘導型の人物像としてイメージされている。そして、多くの人を動かすものは何はともあれ「カネ」なのだというリアリズムが、自民党の派閥議員たちには骨の髄まで浸みわたっているのも事実だろう。つまり、問題の本質はそこにこそあるのではないか。“政治とは……金である”というこの救いがたい短絡思考によって、彼等が支配されているようなことは本当にないのだろうか。
 およそこのような意識レベルにおいては、政治家としての信念や党派としての政治理念など二の次になってしまい、頭のなかはつぎの選挙でもどうやって当選できるかといった一身上のことで、じつは一杯いっぱいなのではないかと想像する。
 かつてこの国の保守政治の世界には「所得倍増計画」や「日本列島改造論」といったような、きわめて具体的な政策ビジョンが存在した。それらのビジョンには少なくともリアルな社会的支持基盤が伴っていた。だが、「アベ政治」になって出てきたのが「憲法改正」である。ここに〈嘘〉があると私は思っている。
(続く)







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