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評者◆添田馨
〈嘘〉は戦争につづく道(3)――「偽装改憲」という愚劣
No.3617 ・ 2023年12月02日




■「偽装改憲」という言葉をはじめて目にした。「総裁選に向け、保守層向けに『改憲をやります』と言っているだけで、本当はやる気がない」(「総裁任期中の改憲 意欲示すも…」朝日新聞/東京本社版2023.11.3総合4)ことを指しているらしい。これは、岸田総理の憲法改正にむけた言行不一致のさまをうけて、某野党の幹部が口にした言葉らしい。背景には、「総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いは変わらない」という国会での総理みずからの発言があるにもかかわらず、衆院憲法審査会の現状は各政党間の改憲にむけた論点整理すらままならないのが現状で、「来年9月までの改憲は極めてタイトだ」と見られている現実があるからである。
 こういうのを世間一般では「嘘」と言うのではないだろうか。一国の総理が国会の場でする公的な発言である。実現可能性のほとんどない、しかも「憲法改正」という国家の中核を左右する一大事業をめぐってのこうした軽々にして無責任きわまる言及には、うすら寒い冷笑的感情をしか私は抱くことができない。
 第二次安倍政権以降、総理をはじめとする政権幹部たちの言動に対して、「やってる感」という評言がよく聞かれるようになった。「緊張感をもって」「スピード感をもって」、そのうえさらに「やってる感」をもって職務に邁進することが、この国の首相や閣僚たちのスタンダードな行動様式として定着した感さえある。岸田総理の発言についても同様だ。
 私たちは、“擬態行動”ならぬ彼らのこうした“偽装行動”に対して、決して慣れっこになってはいけないと強く思う。彼らは人畜無害なただの“オオカミ少年”ではない。本当にその気になれば“解釈改憲”でも何でも実際にやってのけるだけの政治権力をその手に握っているのだから。さもないと本当の危機、本当の危険が訪れたときに、私たちは“偽装”された対処法の選択肢しか与えられなくなり、彼らの「嘘」が見破れなくなるからである。
(続く)







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