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評者◆かもめ通信
“90パーセントが想像力、5パーセントが現実、5パーセントが宇宙人”そんなスーパーレディの活躍から目が離せない!?
幸運には逆らうな
ジャナ・デリオン著、島村浩子訳
No.3613 ・ 2023年11月04日




■CIA秘密工作員の若き女性フォーチュンは、潜入先の中東某国でトラブルを起こしたが為に命を狙われ、潜伏を余儀なくされて、赤の他人になりすましルイジアナの田舎町シンフルへ。
 「亡き大叔母」の友人たちに温かく出迎えられ、ガラにもなく静かで穏やかな日々を送る予定が、着いたそうそう人骨を発見するは、殺人事件の容疑者になるは、危うく殺されそうになるはで、今や田舎町の有名人に!? もひとつおまけに町一番のいい男、保安官助手カーターのハートも射止めてしまってすっかり良いムードなのだけれど、期限付きの潜伏生活、夏が終われば、町を去らなければならないし、その時までに身の安全が確保できているかもあやしくて……と、悩みが尽きないところへ、はたまた事件が!?
 どうやらなにものかが、湿地帯で覚せい剤の製造拠点をつくろうとしているようなのだ。シンフルの“良心”カーターは医者の指示に従って静養中だし、新しい市長が任命した保安官はとんでもない人物で……。
 愛する町を守るために彼女たちが立ち上がるのは当然のことだった。
 「ワニ町」シリーズ第6弾。
 あいかわらずハラハラもドキドキもいっぱいなのだが、なんだろう悪役との対峙や事件の解明にまつわるスリルというよりは、スーパーおばあちゃんアイダ・ベル&ガーティとフォーチュンが今度はいったいなにをやらかすのだろうというハラハラで!?
 ちなみに私、スピード狂ではあるけれど大抵の場面では冷静沈着で頭脳明晰なアイダ・ベルのファンなのだけれど、本作ではガーティの株が急上昇。

 カーターはガーティに目を戻した。「おれはただ、こんなことをするのは危険だし、怪我をする可能性もあったと言いたいだけだ」
 「あら、そりゃもちろん怪我をする可能性はあったわ」とガーティ。「バーナーディーン・スタンズベリーはきのう、トイレで立とうとして足首を骨折したんですって。だからってあなた、あたしにトイレを使うのをやめろって言う?」
 アイダ・ベルがうなずいた。「先週はアーチー・ブラッドフォードがシャワーを浴びているときに倒れて腰を折ったっけね」

 戦地での従軍経験を持つ元教師、いろんな意味で未だ「現役」のガーティにとって、こんな会話は序の口で、“90パーセントが想像力、5パーセントが現実、5パーセントが宇宙人”と評される彼女の行動力のすさまじさといったら!
 そしてまた、恋多き女でありながら、なぜ結婚しなかったのかという理由を語る場面にグッとくるだけでなく、カーターとフォーチュンがうまく行くようにと願う一言も印象的。

 「あたしの場合、幸運をつかんだことなんて記憶の彼方。この年になると、他人の恋愛でわくわくするしかないのよ。だから自分の利益を守ったわけ」

 事件の真相も、町の治安も、フォーチュンの命を狙う悪党も、そしてもちろんあの恋の行方も……と気になることは沢山あるけれど、それよりなによりガーティをはじめ、愛すべきシンフルの面々の想像の斜め上を行く活躍から目が離せなくて、早くも次巻の翻訳刊行が楽しみでならない。







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