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評者◆添田馨
改憲という亡霊――亡国に至るを知らざれば即ち亡国⑬
No.3602 ・ 2023年08月05日




■7月19日の朝に岩波書店の月刊誌「世界」編集部の公式ツイッターアカウントが一時的に凍結され、SNS上にいいしれぬ衝撃が走った。これに符牒をあわせたようにAmazonサイト上でも「この本は現在お取り扱いできません。」の告示が出て、ネットユーザーたちの間で不穏な憶測はさらに加速していった。「この本」とは「世界」2023年8月号であり、「安倍政治の決算」という特集が組まれた号だった。
 この原稿を書いている20日時点で、アカウント凍結と特集記事内容との関連性はまったく確認できていない。新聞報道によると、ツイッタージャパンは「凍結等の対応についてはルールに従って判断」されたとしたうえで、「個別の事象についてはお答えしかねる」との回答だったようだ。
 ところで第二次安倍政権発足以降、私たちはこの決まり文句をいったい何度聞かされてきたことか。国会質疑や記者会見や個別インタビューなど政治的な公開の場において、この言葉は「回答は差し控えさせていただく」とならび、都合の悪いことへのダンマリを決め込むスタンダードになった感がある。私はこうした傾向が、きわめて憂慮すべき不当な事態だと考える。
 なんらかの疑惑や不祥事などが起こったときに、その当事者や重要な関係者が意志決定の内部プロセスをこうして隠蔽することは、問題となっている疑惑や不祥事の核心的な責任の所在を不問に付すという居直り表明に他ならない。今回のアカウント凍結については、多くの人が「世界」の特集記事との関連性を疑ったわけで、その最も知りたい「個別の事象」は、結局のところ曖昧にされたわけである。
 私はこうした不健全な隠蔽体質の土壌をつくったのは、ほかならぬ故安倍晋三氏だと思っている。モリ・カケ・サクラや公選法違反容疑など、これまで数々の疑惑があったにもかかわらず、何ひとつ真実が公にされることはなかった。死してなおこうして新たな“疑惑”を派生させるこれは安倍氏の呪いでもあろうか。
(続く)







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