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評者◆奥堀亜紀子
「どこか」を越えて――海を見つめる者の先に見えているもの
泉々
ウラジーミル・ジャンケレヴィッチ著、合田正人訳
No.3598 ・ 2023年07月08日




■一九六五年十月二十四日にフランスで開催された第七回フランス語圏ユダヤ知識人会議(シンポジウム)に出席したジャンケレヴィッチが発した言葉の一節を紹介したい。『泉々』に収められている「他の諸国家と同様の一国家なのか?」の一節である。「ある日、私はテル=アヴィヴの海岸のベンチに座っていた。老齢の男性と老いた婦人が私の隣に座った。身なりは貧しく、彼らはロシア語を話し始めた。私は思った。どれほどの厚みの悲劇が彼らをモスクワあるいはオデッサからこのベンチに、中東のとある海岸へと連れ来たったのだろうか。この海岸に至る前に座礁してしまった数多のロシア人たちの人生を私はあえて思い描こうとしたが、ほとんど無理だった。住人のうちにこのような人々が今もいるのであり、それはイスラエル国の基礎のひとつであって、悲劇は同じくその実在のなかに刻印されているのだ。それを捨象することはできない」。
 ジャンケレヴィッチはこのシンポジウムが他とは異なり、シンポジウム以上の何ものかを有していると発言している。それは「喪」である。そう語る彼が想っているのはもちろん、アウシュビッツで死んだ同胞たち、そしてイスラエルという国に救いを求めてやってきた同胞たちのことである。はるか昔、イスラエルはユダヤ人の住む地であったと言...







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