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評者◆添田馨
改憲という亡霊――亡国に至るを知らざれば即ち亡国⑪
No.3593 ・ 2023年06月03日




■NHK「映像の世紀 バタフライエフェクト」のなかで映画の都ハリウッドにおける1930年代の「アカ狩り」の模様が放映されていた。遠い昔のことだと思っていたのだが、ごく最近、この日本で「憲法9条」の支持者を「アカ」呼ばわりする向きがあるのを知って、非常に驚いた。私の知人が、9条支持者だったことから、政治的に中立ではないとの理由で番組への出演を断られたということがあった。「アカ」発言はその時に飛び出したという。
 いつからこの国では憲法を守ることが国益に反する“悪”であり、それを踏みつけることがあたかも英雄的行為のように“善”として称賛されるようになったのか。岸田政権による敵基地攻撃能力(反撃能力)の閣議決定などもそれに当たる。これに加えて原発の再稼働推進や運転期間延長の決定など、「俺は安倍さんもやれなかったことをやったんだ」と本人は自画自讃しているようだが、こういう勘違いは本当に見苦しい。悪名の背比べである。
 国民的議論も国会での審議も経ることなく、解釈改憲という手口でなし崩し的に集団的自衛権をみとめ、憲法違反の疑いの強い安保法制を通したのが当時の安倍政権であり、この辺りから「閣議決定」の悪名は国民のあいだに一気に知られるようになった。岸田総理は、安倍氏がレールを引いたこの悪しき慣行を踏襲しただけであり、国会軽視、国民無視の政治体質をもって自身の誉れででもあるかのように誇示する神経は、もはや犯罪的な軽薄さである。本当に恥ずかしい。
 こうした動きに比例するように、憲法遵守の精神が、政治的中立の名のもとに今後ますます排除されるようなことになれば、わが国の立憲主義の危機はもはや後戻りできないレベルにまで到達するのは火をみるより明らかである。憲法はそもそもが国家の行動を縛る法規範であって、それを守るのは国家に課せられた義務でもある。そんな“基本の基”さえないがしろにする国家ならば、われわれ国民の側から“憲法反逆罪”の汚名をそこに着せざるを得なくなるだろう。
(続く)







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