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評者◆星野真志
自然と政治をめぐる壮大な思考――薔薇の匂いのように、無駄なものとして切り捨てられてしまう物事がもつ数値化できない有用性を、いま一度擁護しなければならない
オーウェルの薔薇
レベッカ・ソルニット著、川端康雄/ハーン小路恭子訳
No.3582 ・ 2023年03月11日




■レベッカ・ソルニットの『オーウェルの薔薇』は、一九三六年にイギリスの作家ジョージ・オーウェルが庭に薔薇を植えたというエピソードを起点に、自然と政治をめぐる壮大な思考へと読者を誘う、さまざまな読み方に開かれた本だ。全体主義を批判したディストピア小説『一九八四年』(一九四九年)の著者として知られるオーウェルが、じつは庭仕事に長い時間を割いていたということを、意外に思う読者も多いだろう。ソルニットはオーウェルの家事日記などこれまで比較的見過ごされてきたテクストに言及しつつ、薔薇をはじめとする、政治的見地からは一見取るに足らないものへのオーウェルの愛着に注目することで、功利主義批判というオーウェル作品に通底する主題に光を当てる。
 ソルニットは薔薇が象徴するものとして、「喜び、くつろぎ、自己決定、内的生活、そして数量化しえぬもの」(一〇九頁)を挙げる。「数量化」に関連して、オーウェル作品で最も有名な数字といえば、『一九八四年』に登場する「二+二=五」という数式だろう。全体主義体制下での真実の歪曲を示す例としてよく引き合いに出されるこの数式は、元々は五カ年計画を四年で達成すべしというソ連のスローガンだった。これをオーウェルが用いたことには、二+二を五にするような生産性の盲信という功利...







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