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評者◆添田馨
改憲という亡霊――亡国に至るを知らざれば即ち亡国⑥
No.3574 ・ 2023年01月14日




■岸田政権は昨年12月16日に国家安全保障戦略など安保関連3文書を閣議決定した。そこで使われる言葉について、これまで「敵基地攻撃能力」だったものが「反撃能力」という表現に変えられた。1956年以来、この“能力”は「自営の範囲」に含まれるとされたものの、国は政策判断としてそれを実際には“保有”してこなかった。今後は「反撃能力」と名前を変えて、名実ともに“保有”できることになる。
 「敵基地攻撃能力」から「反撃能力」へと言葉が変化したということは、間違いなく何かがここで大きく変わったのである。しかし、中身が具体的にどう変わったのかは、当の文書を読んだだけではほとんど何も分からない。そんな書き方になっている。
 ところが、この「敵基地攻撃能力」について、「敵基地に限定せず、中枢に撃ち込むことで機能を破壊できる能力を持つことが大切。打撃力、反撃力という方が正確だ」と2021年12月7日のBS番組で発言していた政治家がいる。昨年7月に亡くなった故安倍元総理である。岸田総理は用語の選択については「さまざまな議論があり、今後、名称も含めて検討していく」と2月18日の衆院予算委員会で答弁していた。しかし蓋を開けてみれば、なんのことはない、安倍氏が使っていた「反撃力」という言葉がほぼそのまま踏襲されているわけで、私はきわめて不愉快だ。
 「国家防衛戦略」には、「ロシアによるウクライナ侵略の教訓」として、「ウクライナがロシアによる侵略を抑止するための十分な能力を保有していなかったこと」が言及されている。同じくウクライナを引き合いに出して安倍氏は「戦い抜く人たちには誇りが必要だ。自衛隊の違憲論争に終止符を打つ」(4月17日)と、あろうことか国連憲章違反のロシアの無法な行為を、憲法改正への引き金に利用しようとしていた。だから、文書に書かれていなくても、私は国の安全保障政策の裏には“改憲の亡霊”が巧妙に隠されていると疑わざるを得ないのだ。
(続く)







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