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評者◆ぱるころ
タイルが醸し出すノスタルジックな味わいが、何とも言えない魅力。
日本全国タイル遊覧
吉田真紀
No.3573 ・ 2023年01月01日




■2022年は、「タイル名称統一記念100周年」にあたる。本書は、「タイル好き」としてSNSなどでタイルの魅力を発信する著者が、全国46施設のタイルを写真と共に紹介する。
 私が本書に興味を持ったのは、訪れたことのある次の3施設が紹介されていたため。小石川後楽園(東京)、起雲閣(静岡)、湯之島館(岐阜)。中でも、改めて見ることができて良かったのは、起雲閣。この施設は大正8年に建てられ、「熱海三大別荘」の一つと言われる。かつては志賀直哉や谷崎潤一郎などの文豪が滞在し、ローマ風呂やステンドグラスの美しさは壮観。数年前に訪れた私は、一部屋ずつ見ていたら時間が足りなくて最後かけ足になってしまい、いつかもう一度行きたいと思っていた。この起雲閣では、本書で紹介される美術タイルの二大巨頭、池田泰山・小森忍の競演を見ることができるという。
 その他、目に留まったのは、ホテルニューグランド(神奈川)や川奈ホテル(静岡)。高級感はもちろんのこと、タイルの使い方によって温かみと風格が表現されていることが、写真から伝わってくる。一方で、古いお屋敷のお風呂場や洗面所に使われているタイルから、当時の人々の生活に想いを馳せるのも楽しい。
 また、タイル好きの著者ならではの目線で書かれたコメントが斬新で面白い。とにかく「視界いっぱいに広がるタイルのスペクタクルに心拍数は上がりっぱなし!」というほどのタイル好き。例えば、床に貼られたタイルが気になったので製造元を知りたいとき「裏型を見れば製造地やメーカーが分かるだろうが、めくるわけにもいかない」(確かに……)。ときには、ある施設の取り壊しにあたり、タイルだけは壁から剥がして移設されると聞き「うまく剥がれますように」と祈る(本当にタイルを愛しているんだな……)。
 タイルが使われている建物と言っても築年数や規模・用途は様々だが、共通するのはノスタルジックな味わいを感じる点。「タイル」と聞いて特に興味を持っていないと思った方も、本書を眺めてみると、懐かしい世界や、レトロな愛らしさ、歴史を感じる装飾の美しさに引き込まれるだろう。







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