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評者◆休蔵
本を読むことを仕事にするのは、なかなかハードそう
文にあたる
牟田郁子
No.3565 ・ 2022年11月05日




■校正って誤字、脱字をチェックすることだと思っていました。
 無知すぎて恥ずかしい!
 本書はフリーの校正者が著した校正業界の実情本……というより本人の経験談だから、それぞれなのかも。
 でも、1人の校正者の目から見た校正業界、出版業界の様子を垣間見ることができる。
 さて、校正者の業務内容であるが、そのものズバリ校正である。
 校正は誤字、脱字のチェックに終始するというものではない。
 本に書かれた内容の裏どりまで行うというのだ。
 固有名詞や数字、事実関係の正誤を確かめる「事実確認」では、辞書や百科事典を複数冊チェックしつつ、ネットでも検索する。
 図書館に足を運ぶのは当たり前で、書店や古書店から資料を取り寄せてでも事実を確かめる。
 場合によっては、現場も確認するようだ。
 気候チェックも重要で、さらには交通規制すら確かめる必要がある。
 徹底的に調べるため、10行足らずの文章に4日もかけた経験があるとか。
 年間7万冊ほど刊行される日本の出版業界で、上記のような校正がすべてにおいて徹底されているわけではないという。
 私が想像する校正で終わっている本もきっと世の中に出ているのだろう。
 本書の著者はフリーランスの校正者である。
 外部校正者というらしい。
 特定の出版会社に属さず、複数の会社からの依頼で校正を行っているそうだ。
 大した校正を受けることなく世の中に出ていく本が数多あるなか、社内の校正だけでは十分とせず、外部にそれを依頼する出版社もあるということ。
 本との対峙の心づもりが大きく変わってしまう事実だ。
 「本を読むことを仕事にしています」。
 本書はこの文章から始まる。
 なんとも魅惑的と思って見たものの、校正者の仕事内容を考えると、本を読む行為が苦行に思えないのか心配になるほど、なかなかハードな印象を受けた。
 校正の時、著者は「文章を読む」のではなく、「文字を見る」ような方法でチェックしているそうだ。
 「校正者は読んでも読んではいけない」とのこと。
 う~ん、辛そう。
 でも、著者は1日の仕事終わりにゲラを閉じ、文房具や辞書を片付けると、「やっと好きな本が読める」と安堵するそうだ。
 本が好きなままでよかった。
 校正者はサッカーのゴールキーパーの役割を果たす。
 だから、出版前に失点しないのが当たり前。
 万が一、1つでも取りこぼしたらダメという厳しい世界。
 それでも取りこぼしは付き物で、いつまでもくよくよしない精神も大切という。
 ミスは許されないけど、ミスは付き物、ミスっても引きずらない……。
 これも苦しそう。校正は「防災」にも例えられるそうだが、「減災」ではダメ。
 単純に本を読むだけの立場だから、本は著者だけの仕事と思ってしまう。
 もちろん、出版に携わる多くの人たちが関わることは想像にかたくないが、思った以上に様々な立場の人た関与していると改めて実感した。
 おかげで毎日毎日読書を楽しむことができる。
 感謝です。







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