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評者◆添田馨
改憲という亡霊――亡国に至るを知らざれば即ち亡国③
No.3561 ・ 2022年10月08日




■自民党が衆参両院の議長をのぞく所属国会議員379名を対象に、旧統一教会との関係について書面にて報告させたところ、全体の半数近くにあたる179名が何らかの接点があったと回答したという。自己申告でこの数字だから、第三者による厳密な調査ならば、さらにこの数を上回る公算が大きい。
 こうした実態を知って、私などは「ああ、終わってるな」という諦めにちかい感慨を抱いたが、これら一連の騒動が安倍元総理への襲撃事件に端を発していることを考えた時、暗殺者Yが撃ち抜いたものは、じつは、この国の支配勢力の暗部に宿る闇の領域への“留め金”だったのではないかという実感を強くした。
 「エバ国家日本はアダム国家韓国に贖罪するべし」とする「反日」的な教義をもつ団体と、「嫌韓」ナショナリズムを信奉するはずの保守政治勢力とが、こうした癒着的な協力関係を築いている姿に、私はおぞましさを通りすぎた巨大な虚無の深淵を覗いてしまったような気持になった。“ねじれ現象”といったやわな表現では到底カバーしきれない、この国のまさに自我崩壊のさまを、それは私たちにまざまざと見せつけたからである。
 だが、自民党がはからずも白日のもとに曝してしまったこの人格分裂した無残な姿は、どこか目新しいものではないとの感触をも私にもたらした。そこで想起されたのが、95年に言論界を巻きこんで起こった“歴史主体論争”の顛末だった。特に加藤典洋が『敗戦後論』のなかで、わが国の「戦後」をジキル氏とハイド氏の喩えでもって、「日本という社会がいわば人格的に二つに分裂している」と断じたことに、それは関わる問題である。
 私たちはいま一度よくよく考えなくてはならない。憲法を憲法として尊重しない政権が、戦後七十五年にもわたって君臨している、この“人格分裂”した国家の異常さを、である。今回顕わになった自民党の人格分裂した姿は、そうした国のあり方の正確なネガ表現に他ならないからである。
――つづく







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