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評者◆秋竜山
神さまを笑う、の巻
No.3557 ・ 2022年09月03日




■昔の女の子たちは〽かごめ、かごめ、うしろの正面ダァーレ、などとうたいながら遊んだものであった。これは女の子たちの遊びであったので、男の子たちは、その遊びを指をくわえてそばでみていた。女の子たちが輪になって、中央でしゃがんで目かくしをしている。女の子のうしろに、そっとしゃがみこむ。その一人のしゃがみこんだ女の子をあてるという遊びであった。私の子供の頃は男の子と女の子の遊びがちがっていて、男の子は女の子の遊びの仲間にはいれてもらえなかった。今の時代、なぜかそのような遊びもなくなってしまった。なぜなくなってしまったのかわからない。そんな時代になってしまったから残念がってもどうしようもない。私は女の子と一緒になって遊びたかったのに。
 谷泰『笑いの本地、笑いの本願――無知の知のコミュニケーション』(以文社、本体二八〇〇円)では、
 〈会話における笑い――(その印象の多様性と驚き音声との隣接性)いったい会話の流れにしばしば挿入される笑いとはなにか? 穂継ぎ的関与が発話であるかぎり、その分節化された言語的指示能力によって、その発話者が先行発話のいかなる点への注目のもとで関与したのか、多くの場合そのおよそを知ることができる。ところが笑いには、不幸なことに、言語のようにその関与先を示唆する手がかりがない。「はっはっはっ」と声を立てられて、その意味を問われたわれわれは、いったいその意味はなんだと答えたらよいのだろう。笑いは、語彙のようにそれが指示する対象をもたない。つまり言語的意味に対応する意味をもたないのである。にもかかわらずわれわれは、愉悦の笑い、嘲笑の笑い、軽蔑の笑い、悪魔的笑い、羞恥の笑いとをみるだけでも、そこには態度表現としては相互に対立するかのような含意が認められており、まさにぬえであるかの印象を与える。〉(本書より)
 たしかに、会話における笑いは、まず最初に一人が、「ワッハハハ」と、笑うと、全員がつられていっせいに笑い出す。落語は、舞台で落語家が落語を演じている。すると、客席で客は聞いていて一斉に笑いだす。その、笑いの意味は、落語の笑いが面白いから笑うのであって、その笑いは面白いという単純な笑いである。
 落語の話に登場する熊さんの笑いは本書でいうように軽蔑の笑い、悪魔的笑い、など、上から目線の、人を馬鹿にした笑いである。笑われる人は必ず下から目線である。つまり、神の笑いである。だからといって、神に笑われたからといって、人間は神を笑ったりはしない。神は天上に存在している。そんな神のいる天上にむかって、「アッハハハ」なんて笑ったりしない。もし笑ったらバチをあてられるのではなかろうか。「お前、何を笑っているんだ」と一人がいう。「僕は今、神さまを笑っているんだ」といって、まわりにいたものが一斉に天上の神にむかって笑い出したとしたら、それこそ落語の世界である。落語家の笑いを、客席で神さまが聞いているだろうか。まさか、神さまが声を出して「ワッハハハ」と、笑ったりしたら、さぁ、どーしましょう。







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