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評者◆秋竜山
なぜ、「怒る」のだろうか、の巻
No.3555 ・ 2022年08月13日




■動物の中で動かないものはいない。人間は動く。まず、動かずジッとしているものは、まずいない。男にしろ女にしろやたらとうごく。だから人間は動物という。動く物だから、動物というのである。それは人間にかぎらない。動物園へ行ってみると、すべての生き物が動く。動くから動物園といい、そこへ見物にきている人は、動物園へ子供連れでやってきた。だから、あしたの、休日は動物園へでも行こうかと、パパがわが子にいったりするのである。それを親子で動物園へ行くというのである。飼っている犬や猫もつれていってやろう!! と、いうことになると、家中で動物園へ出かけるということになる。動物園のにぎやかさは動くものでいっぱいである。そして、動物園に大きな木がある。たとえ大きな木であるにせよ、木などは動かない。もちろん自分の意志どおりにうごくことは男も女も一緒である。
 そして、三才の我が子も動物の部類に入る。子供は動物園へきてめずらしい動く動物にエサをあげたりする。すると、立札に、「エサをあげないで下さい!!」と、書かれてある。ところが、オリのそとにある大きな木には、「この木にはエサをやらないで下さい」とは、書かれていない。なぜ木や花にエサをやらないで下さいと、いわないのか。それは植物であり、動物ではないから、もしエサをあげたとしても、まず食べることはできないだろう。つまり、エサとは動物だけにいう言葉である。まさか大きな木に、「エサをやらないで下さい」という立札はないはずだ。そのかわり、エサとはならず、「水をあたえないで下さい」と、いう立札があったりするものだ。
 人間はよくケンカをする。「バカヤロー」と、わめくと、相手が「なんだと」と、やりかえす。そして、「ヤイ、おもてへ出ろ」と、叫びあいながら、そとへ飛び出す。ところが、植物、つまり大きな木や花が、ケンカして「やい、おもてへ出ろ」なんて、いいあわない。いいあって、おもてへ出た木や花など見たことがない。植物はいつもその場にジッとしているだけで、ケンカしてそとへ飛び出すこともない。いうなれば動物とちがって平和主義者なのである。夫婦ゲンカして、「ヤイ、おもてへ出ろ」なんて、いいあいはしない。だからといって仲のよい夫婦ではない。
 加藤俊徳『脳が知っている 怒らないコツ』(かんき出版、本体一三〇〇円)では、「同情は怒りを未然に防ぐ特効薬」と、いうサブタイトルがあり、
 〈怒っている人のことを「この人は困っているんだな」と捉えられるようになると、相手に反撃しようという気持ちは失せ、代わりに同情心が芽生えてきます。かつての私の上司に、決して他人の怒りに感染しない人がいました。この上司が、「怒り」を「同情」に変える達人だったのです。〉(本書より)
 怒るという感情は動物だけにある、なぜ、「怒る」のだろうか。植物は怒ったりしない。動物のやたらと怒るのは、動物であるからだ。動きまわるということはいいことは一つもない。その点、植物はちがう。その場にジッとしていて相手のことなどどーでもよいのだ。よーするに動きまわるということはろくなことはない。やれ、足をふんだとか、ふまれたとか。そんなことでケンカするのは動物だけである。だからといって、今度生まれかわるとしたら、植物がいいとは思わないのである。植物さんゴメンなさい。でも怒られる心配はないか……。







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