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評者◆秋竜山
世の中すべて「起承転結」、の巻
No.3547 ・ 2022年06月18日




■誰もが知っていると思うが、世の中すべてが「起承転結」で成り立っているのである。つまり〈何が〉〈何して〉〈何とやら〉である。〈何が〉とは何か。〈何して〉とは何か。〈何とやら〉とは何か。そして〈納得〉できるのである。
 樋口裕一『頭のいい人は「短く」伝える』(だいわ文庫、本体六〇〇円)では、
 〈①問題提起――教育の違いをはっきりさせるべきだ。
 ②意見提示――確かに教育も飼育も相手をよくしようとしている。
 ③展開――教育も飼育もともに個性は大事にしているかもしれないが、飼育は馬や牛がなりたいと思ったことの手助けをするわけではない。
 ④結論――教育は自主性を重視する、飼育はそれを無視して個性を伸ばそうとする。〉(本書より)
 つまり、①問題提起、が〈起〉であり、②意見提示、が〈承〉であり、③展開、が〈転〉であり、④結論、が〈結〉となる。すなわち四コマ漫画でいうところの「起承転結」である。この一つでも欠けると四コマ漫画は成立しないということになる。
 〈ほとんどの論説文はこのように、4行にまとめることができる。これよりももっと長い論説文の場合も、段落や章ごとに何かについて問題提起し、それに対して意見を述べ展開させることで、結論へ導くという形をとっているのは同じだ。〉(本書より)
 起承転結は四コマ漫画だけにあるわけではなく、一コマ漫画の中にもあるわけだ。つまり、一コマ漫画の中にも「起承転結」がふくまれることになる。
 もし、一コマ物の漫画の中にふくまれていないとしたら、一コマ漫画は成立しないということである。一コマ漫画をよく見るとわかるだろう。「いつ、どこで、誰が、何をして、どうなったか」が、わかるはずだ。
 〈文章を読むときや話を聞くときに最も大切なのが、内容や話の意図を抽象化する力、(略)そのための方法が「4行構成」なのだ。〉(本書より)
 よく一枚物の漫画はむずかしくてわからないという人がいる。それは、一枚物の漫画の内容にふくまれている「起承転結」が理解できないからである。
 たとえば一枚物の漫画に無人島漫画がある。絶海の孤島がある。その島に漂着した男がいる。男は何をしているかというと、はるか遠くの水平線に向かって「オーイ、助けてくれ!」と、四六時中叫び返している。つまり、いくらよべど叫べど応答がなく、〈シーン〉としずまりかえった海が存在している。このようにしての一枚漫画の中にも「起承転結」が内在して成立しているのである。
 どうしても理解できない人は、ためしに一度無人島へ漂着してみたらいかがでしょうか。島に一人たたずんでみるとハッキリするだろう。つまり漫画の中に身を投じてみるということである。「なるほど、これが一枚漫画の世界なのか」と、わかるはずだ。水平線のかなたから別の誰かが叫んでいる声が聞こえてくる。「オーイ!! 助けてくれ」。彼も「起承転結」の世界の中で生きているのである。







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