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評者◆秋竜山
地獄と極楽のウラオモテ、の巻
No.3546 ・ 2022年06月11日




■葉っぱには、裏表があるように、地獄と極楽にも裏表があるように思える。地獄は立っている地面の下。そして極楽は宇宙のかなた、それも果てしない天国というとらえかたができるだろう。葉っぱのたとえ通り、裏表、つまり、天国と地獄である。自分の立っている地面の足の裏の果てしない下のどこかに地獄があって、そこには、おそろしい鬼がいる。そして、極楽は空を見上げるとはるかかなたに神さまが住んでいる。マンガなどで知られている頭の上には輪っかのような光が浮いている。それが、天国と地獄の違いである、と誰もが思っているに違いあるまい。
 〈昔から伝わる仏教説話で、「地獄と極楽の違いの教え」があります。この仏教説話は子供のころから幾度となく聞かされました。つぎのような趣旨の話です。ある人が、地獄とはどんなところか見にいったそうです。すごく怖いところかと思っていってみると、ちょうど食事の時間でした。なんと、大きな食卓には美味しそうなご馳走がたくさん並んでいます。そこにやせ細った地獄の人たちが入ってきて、席に着きました。見ると、二メートルぐらいの長いお箸が置いてありました。地獄では、それを使って食べなくてはならない決まりだそうです。われ先に争うように食べ物を自分の口に運ぼうとします。しかし、お箸が長すぎて、食べ物を口に入れることができません。みんな口に入れようと必死になっているのですが、ひと口も食べられずに苦しんでいます。そして食事の時間が終わりになってしまいました。誰ひとり食事をとることができません。そのためいつも空腹でイライラしており、青白くやせこけていたのです。〉
 皆木和義『「折れない心」をつくる 菜根譚の知恵――仕事、人間関係…人生を支えてくれる、至高の中国古典』(三笠書房、本体六〇〇円)より引用。
 〈私たちは食事するときお箸を使用していますが、二本の箸を、五本の指であやつって、たとえばタクアンなどを器用につまみあげたりします。二本の箸の長さはみな同じです。一本が長くてもう一本が短いなどということはありません。はじめて子供の頃親などに教わり、一生死ぬ時まで使うのが箸です。一度、本書にならって二メートルぐらいの箸を使用してみました。自分の背丈より長い箸です。たとえ、つまみあげたとしても長過ぎて口へ持っていくことはできません。ためしにやってみましたが、やはり無理でした。それを地獄ではやっているということです。箸を使って食物をつまんで口に持っていくのは他の動物にはなく人間だけのようです。人間には五本の指があるから、その指をみごとにあやつって口に運びこむわけです。なぜ、五本の指があるのが人間だけであるということ、そして他の動物にないのかよくわかりません。極楽の差は、この箸の使い方であるという説です〉(本書より)
 本書に書かれているように、地獄では亡者たちが箸を使用しているのです。自分の姿に似せて人類を創造した神さまも使っているでしょう。それには箸をもてるように、そして、そのように使えるのは手だけであって、足の指を器用にあやつったりしてもムリである。ためしに猫や犬に箸を持たせてみた。もちろん持てません。このような箸ならどーだろうか、二メートルの長い箸でつまんで、つまみ終わった次点で、ふつう使われている箸の長さにちぢむということに開発したらどーだろうか。そして、そういえば、三本の箸などというものもみたこともない。ためしに三本の箸をつくり指で持ってみた。やはり一本不要となる。箸は二本でなくてはならないのである。







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