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評者◆秋竜山
江戸川柳を笑う江戸人の笑い声、の巻
No.3542 ・ 2022年05月07日




■俳句と川柳の違いは、俳句には季語を必要とし、川柳には季語は必要としない点である。そして、俳句には五・七・五の中には必ずしも笑いは重要ではないのに対して、川柳は季語を必要としないかわりに、笑いがなくてはいけない。
 神田忙人『江戸川柳を楽しむ』(朝日選書、本体一四〇〇円)では、
 〈川柳では「うがち」という言葉がよく使われる。川柳とは一言でいえばうがちの文芸である、とさえいわれる。だが、うがちの定義はあいまいなところがあり各人各説という感じがある〉(本書より)
 芭蕉の句に「古池やかわず飛びこむ水の音」と、あるが、これを川柳でからかうと、「古池や芭蕉飛びこむ水の音」と、なる。古池伝説というのがあって、数知れず伝説本が出て芭蕉をからかっている。芭蕉の「奥のほそ道」は俳句であるため笑いはない。
 〈いまわれわれが川柳と呼ぶものは江戸期には前句付、あるいは略して前句とも呼んでいたものであり、川柳という名称は明治の中期から後期にかけて確立したのである。浅草の名主、柄井八右衛門が川柳の号を用い、前句付の点者(選者)として成功を収め、のち次第に前句から離れて一句立の句を中心にして時代の好尚に投じ、選句集「誂風柳多留」を刊行し、人気で他点者たちを圧倒したため、役の名がいつしかこれらの句を代表するような有り様になった。彼の選んだ前句付は「川柳点の前句付」と呼ばれ、略して川柳点ともいわれたが、他の点者の選句も川柳点と呼ばれることも多かったようだ。(略)〉(本書より)
 江戸川柳に「朝かえりだんだん家が近くなり」と、いうのがあり、おそらくドラ息子がのんで朝がえりすることになったことを詠んだものである。男だったらおそらく誰もが経験するであろう。
 「胸の火を一筆しめす硯水」
 「我が好いた男の前をかけぬける」
 「おちゃっぴい馬鹿馬鹿馬鹿と逃げて行き」
 「いはずかたらず我が心目で知らせ」
 「大きにおせわ十六がどうしたえ」
 「惚れたとは女のやぶれかぶれなり」
 「低く云ひ高く笑ふは憎らしい」
 「口説くやつあたり見い見いそばへ寄り」
 「くどかれて娘は猫にものを云ひ」
 「女房にきまらぬ内がおもしろい」
 「恋の橋渡すは闇の涼み台」
 「半ぶずつさすと傘恋になり」
 「団扇では憎らしい程叩かれず」
 「麦畑ざわざわと二人逃げ」
 「三味線をやめて鼻でる月見かな」
 「三味線と別々になる気の毒さ」
 「うたた寝の謡は尻が鼓なり」
 「美しさ叱られぶりのイイ女房」
 「わづらいの内は女房の膳で食い」
 川柳と俳句の違いはあきらかである。
 「秋風のふけども青し栗のいが」(芭蕉)
 「葱白く洗ひたてたるさむさ哉」(芭蕉)
 「こがらしや畠の小石目に見ゆる」(蕪村)
 江戸川柳も俳句もどちらも江戸人がつくったものである。江戸川柳を笑う江戸人の笑い声がきこえてくるようだ。







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