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評者◆凪一木
その140 大手ゼネコンの逆襲
No.3541 ・ 2022年04月30日




■私の異動話の続きである。
 責任者は、一人減らすについて、「グレイ(通称G、つまりは爺だ)が不要である」と上司に何度も訴えた。Gはミスを連発し、なおかつ仕事をさぼる。だが回答はいつも同じ。「凪を出す」の一点張りだ。
 前年から所長のパワハラを訴えてきたのは、これまで書いてきた通りだ。派遣法に沿って派遣先に苦情申し立てを行い、派遣先との団体交渉を経て、現場の聞き取り調査の末に、不合理な行動をしていた派遣先の「所長追放」に成功した。一年を要した。「凪を出せ」は、その報復人事なのだ。いや、派遣先を訴えたこと自体への腹癒せと思われる。キツネ上司はその「裏約束」をずっと否定している。だが、これは言質を取った。
 七月一〇日のことである。責任者と朝の九時から三〇分ばかり話をしたうえ、別れてメールを入れた。その回答はこうだ。〈凪さんの異動の話が出たのは先月です。〉
 結局そこから八カ月の闘争となった。とにかく異動はせず、「本人の同意なしに異動させないという約束を破るなら客先のビルで就労闘争も辞さない」と強い立場で臨んだ。どうしても異動するならば、条件としてこれまでの昇給差別是正や賃上げなどを要求した。なおかつ、御茶ノ水現場以外の移動先も提案させる。結果、それを認めさせ、異動に応じることにした。勝利する部分は「した」といえよう。
 前半(所長追放)、後半(私の異動)、そしてPK勝ち(不当昇給是正・給与増額)といったところか。本音を言えば、現場を出たくはなかった。
 ところで、元同僚の銭さんに忠告された通り、派遣先のゼネコン連中の逆襲は凄かった。人類を叩き潰しに掛かってきた、初登場時のキングギドラの如きである。
 「凪さん、私も、某大学の現場で、徹底的な仕返しに遭い、結局雇止めとなりました。長い物には巻かれよで、これ以上やめたほうが良い。大手は相手にしたら、どんなことでも仕掛けて来るよ」
 とにかくえげつなかった。弱気の人間に付け込み、お金で釣り、ルールを無視して、強引なやり方で、私を排除しに掛かってきた。しかも真正面から正々堂々とではなく、秘密裏に、こそこそと逃げ回るように、安全地帯から言い逃れを出来る状態を確保しつつ、悪事を企み、仕掛けてきた。
 まずは、新型コロナの陽性反応に関する疑惑である。実は、私一人を外して、ずっと他の人間だけで検査してきた。ところが、異動が決まったその日に、私も突然一緒に検査させられる。そして、次の出勤日に、いきなり「陽性」だと言って、パワハラ元所長の息のかかった新所長が、私を家に帰す。だが、その「陽性」という結果を見せてくれない。フェラーリが検査結果の連絡がなかったと言うので調べたら「凪さんの結果だけなかったよ」と責任者のエレキに連絡してきた。
 「凪さん、陰謀を感じるよ。追放された八時半の男の最後の嫌がらせだよ。仕返ししたとしか思えない」
 私は、以下の文章を新所長宛に送った。
 〈先日のPCR検査の結果を、書面で送っていただけないでしょうか。口頭で「陽性だ」と言われても、こちらとしては何をしてよいのか。保健所からの連絡も来ない。病院に行ったところで、証拠となるものも何もなく、大の大人が「口頭で言われたから」と受診に来たとなれば、確実な情報もなく、かかりつけ医としても対処しようがありません。ただ「お帰りください」と、書面を渡されるわけでもなく、何日まで何をするか、勤怠に関する指示もありませんが、指針なり、場合場合の雛形があるでしょうから、書面にして送ってください。面倒くさければ、ラインの画像添付でも構いません。〉
 メールを受信出来ない上にデータの削除とは、怪しいにもほどがある。前の所長が、再び現れて、「遅れた理由は手違いと伝えてくれ」と言ってきたという。そもそも私の陽性を連絡してきたのが聞いたことの無い「池なんとかさん」という名前で、現れた八時半の男(元所長)も、その「池なんとかさん」に電話してメールしてもらっていた、という。
 エレキが現場からメールをくれる。〈怪しさ満載です。池なんとかには心あたりありませんか?何者か気になります。それにメールは本物でしょうか?〉
 池なんとかなど全く知らない名前であり、こちらはそのメールすら見ていない。そもそも、メールを開けられないようにされていて、その「開かない」ことを(結果の出る当日)朝から問題にしているのに、解除しようともしなかった新所長が変ではあった。
 興和株式会社富士検査センターという検査機関だ。買い過ぎて、毎週やっている。
 〈本検査結果は医師の診断に基づくものではなく、新型コロナウイルスの罹患・感染の診断には医療機関の受信が必要です。誓約書/同意書でご選択いただいた医療機関へ速やかにご相談ください。(中略)相談の結果、再度検査が必要になる場合もあります。〉
 そもそもこの検査、いったい誰が金を払っているのか不思議だ。毎週やっているが、始めの時に、Sビルサービス八時半の男と、派遣元T工業のキツネ部長が、こんなやりとりをしていた。「そちらで払ってくださいよ」「それは話が違うだろ」。おいおいおい。会社同士の話ではないのか、個人の権限で話がつくのかよ。しかも、途中からは「凪抜き」で行ってきた。
 ところで、私に病院でPCR検査をして「陰性」が出なければ会社に来るなと言ってきた。私は、無症状なのである。なんら風邪の症状すらもない。厚生労働省の公式見解はPCR検査の受診方法は、受診者が全額自己負担する自費と、公的医療保険が使える保険適用の二通りあり、保険適用でPCR検査を受けるときの検査費用は、検査本体が一八〇〇〇円で、検査判断料が一五〇〇円。ただ、保険適用のPCR検査に限り国が負担、つまり公費負担となる。したがって保険適用のPCR検査は、実質無料で受けられる。もちろん初診料や再診料に公費負担はない。一方の、自費である。
 たとえば秋葉原・神田のたけ内科でのPCR唾液検査は、翌日プランで二万円。最速プランで三万円となっている。追加料金五〇〇〇円で、検査方法をより正確な「鼻咽頭ぬぐい」に変更できるとある。新宿ヒロオカクリニックでは無症状の方を対象とした自費の新型コロナウイルスPCR検査(唾液)を二種類実施し、一つは、税込一四八五〇円、変異株のスクリーニング検査対応の場合は、国内最大手の検査機関に委託で税込二二〇〇〇円だ。これを何のために私が払うのだ。
 今、健康な状態で、家にいる状態である。(建築物管理)







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