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評者◆秋竜山
なぜ猫だけが猫舌なのか、の巻
No.3540 ・ 2022年04月23日




■猫は猫舌といって熱いものを口にすることができない。動物の中で他の動物はそんなことはないが、猫だけが特別にそのようである。
 志村忠夫『いやでも物理が面白くなる[新版]――「止まれ」の信号はなぜ世界共通で赤なのか?』(講談社ブルーバックス、本体一一〇〇円)では、
 〈地球上の生物の中で、人類だけが高度の文明を持つようになったが、その発端の一つは、人類が火を使うことを身につけたことである。人類にとって、火の利用が重大な意味を持ったのは、暗闇を照らす“明かり”のほかに、何よりも、その“熱”のためである。火は熱源として、人類の生活に不可欠のものになった。寒いときには火を用いて暖をとった。火を用いて食物を加熱処理することにより、人類の食生活は飛躍的に豊かになった。〉(本書より)
 人類の歴史は猫と共にあったのだろう。しかし、人類は猫のように猫舌にはならなかった。猫舌になったのは猫だけであったのである。もし、人類が猫舌になっていたとしたら、食生活もかなりかわっていただろう。そして、人類は猫を家畜として家で、犬・ネコ・馬・牛などと共に生活してきたのである。それなのに猫だけが熱い食物を口の中へいれることのできない猫舌であるということだ。不思議としかいいようがないのである。それでもときとしては「私は猫舌だから、熱いものは食べられない」などという人がいたりする。人間がそうなら、猫も熱いものを食べられるということがあってもいいはずであるが、いぜんとして猫は熱いものを食べられない猫舌である。
 〈熱は私たちにとってきわめて身近なものであり、また、日常生活においてばかりでなく、生命自体の維持にとっても不可欠なものである。ところが、あらたまって「熱とは何か」と問われると、明快に答えるのはなかなか難しい。物が燃えれば、(火から)熱が出る。(略)つまり、熱は熱い物体から冷たい物体へと移動(伝導)する流動性の物質(“熱素”)であると考えられたのである。〉(本書より)
 子供の頃、熱いものを口の中へいれた時、母親が、子供の口の中へ(特に赤ちゃんなどへ)「フーフー」と、息を吹き込み、さましてやったものであった。そのことを考えた時、猫の口の中へ「フーフー」と、やったら、熱いものも猫の口の中で冷たくなるということは可能だろうか。家畜としての犬や馬や牛なども同じことがいえるだろうか。だからといってそれらの家畜の口の中へ「フーフー」することをしたという話は聞いたことがない。
 〈結局は、現在の科学知識をもって、「熱とは何か」という問いに対して簡潔に答えるとすれば、「物質を構成する原子・分子の運動エネルギー」ということになる。ここでは「熱とは仕事をする能力を持つエネルギーの一種」と考えておこう。〉(本書より)
 口の中へ熱いものをいれたものでも、「フーフー」とやることによってさますことができる。体をやけどした時、冷たい水などでひやすと熱さをおさえることができる。
 考えてもわからないことは、猫は魚が大好物である。「ネコまんま」などともいう。魚好きは他の動物には見られない。ところが人類は猫舌でありながら、魚だろうがなんであろうがよく食べる。猫はなんというだろうか。







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