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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」⑲
No.3539 ・ 2022年04月16日




■ロシアはウクライナ侵攻を開始した当初から、核兵器の使用をちらつかせてきた。ほとんどの人は、それを単なる恫喝つまりコケ脅しだと信じようとした。まさか、本気で使うことはないだろうと。
 だがウクライナでの戦況はロシア軍にとって不利な方向に動いているようだ。もし仮にロシア軍つまり侵攻した側が逆に追いつめられるような事態になった場合、一発逆転を狙って本当に核のボタンが押されることがないのか、懸念は尽きない。
 そのような中で、安倍元首相がいきなり「核シェアリング」の議論をすべきだ、などと言い出している。ただの思いつきにしても、冗談が過ぎる。この時期のこのタイミングで、こういうことを言い出す神経が分からない。
 「核シェアリング」とは「日本の領域に米国の核兵器を配備し共同で運用する」という考え方だ。つまり、核兵器をなくしていくとか使わないように縛りをかけていくという議論ではなくて、核をより使いやすくするための積極的な方法論に関わることである。国内でもさっそくこれに同調する動きが出ていることを看過すべきではない。というのも、ウクライナは核を持っていなかったから簡単に侵略を許してしまった、核を保有していれば侵攻されることはなかった、などという雑駁な議論が一部で起こってきているからだ。
 国家の安全保障の問題を、単純に軍事力のバランスだけに矮小化してはならないと考える。同時に、核兵器の持つ異次元の残虐さを肌で知っているはずの日本の、それも元首相だった人物が臆面もなくこうした内容の発言を軽々しく発することが、そもそも私には許せない。
 「議論するのは当然だ」と安倍は言う。議論さえしないというのでは、それは「思考停止」ではないかとも。たしか憲法第九条の改正を言い出した時も、安倍はこれとおなじ論法を使っていた。議論しておくことはたしかに必要なことかもしれない。ただ、あなたにだけは絶対に頼みたくないだけである。
(つづく)







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