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評者◆秋竜山
漫画は神の力なしでは描けない、の巻
No.3538 ・ 2022年04月09日




■よく聞かれることは、漫画を描くことは、ひらめきによってうまれるというが、「どのような時にひらめくのか」と、いうことである。真っ白な紙にエンピツを持ち、ひらめきを待つ。いくら待ってもひらめかない。たとえ、ひらめかない時でも、ただひたすら、ひらめきを待ち続けることである。そんな時でも投げ出してしまわないで、机にしがみついているしかないのである。と、いうことは、漫画は神の力なしでは描けない。つまり、神が考えて描いたひらめきのアイデアを、たよるしかない。
 松浦弥太郎『考え方のコツ』(朝日文庫、本体五八〇円)では、
 〈一日の予定に割り振っていきますが、僕の基本的な時間の使い方は決まっています。午前中の四時間は集中する時間、思考の時間もここに入るので、「電話をとりつがない、話しかけない」というルールを、スタッフにも共有してもらっています。(略)朝食後に一時間、思考の時間。毎朝も七時ぐらいに出社。七時半に仕事を始める前は、手をマッサージしたり掃除をしたりというウォーミングアップ。七時半から三〇分間はメールのチェックと返信です。九時から三時間は実務の作業(略)〉(本書より)
 神のひらめきほど、こっちの計画どーりに授けていただけるものではない。神にたよらない著者の、なんてうらやましい予定表である。神はたえずひらめきを授けてくれるというわけではない。いくら待ってもウンともスンともないこともある。待つ身のつらさというものだ。
 若い頃、先輩漫画家から聞いたのだが、作品の依頼があると、すぐフトンを敷く。そして、そのフトンの中にもぐり込む。冬はいいが夏の暑い日は汗だくになって神の授けてくれるひらめきを待っている。汗だくになって目をまわしてしまっては大変とばかりにフトンをけとばす。そして、又かけなおすのである。そんな繰り返しに対し女房はあきれかえるのである。そして、フトンをめくって、「あなた、いい加減にしなさいよ。まさか、眼をまわしているんじゃないの?」「うるさい!! フトンをかけなおせ!!」。こんな夫婦のやりとりを息子の友達の子供が家にかえって「あそこのおじさんは会社へもいかないでフトンにもぐって寝てばかりいるよ」と、いったとか。知らない世間にはそうみえるのだろう。
 〈ところが純粋なアイデアが生まれた瞬間はそれがどんな稚拙でも、自分が「これでいい」とわかります。理屈ではなく心で、「これでいい」と感動する答えが、唐突に降りてきます。(略)自分の体と心で、感覚的に悟る「純粋なアイデアが生まれた瞬間」、これも大切なものです。〉(本書より)
 ウンウンいいながら描いた漫画は苦労したせいか後になってもけっして忘れないものである。その反面、サッとひらめいて描いた漫画は、すぐ忘れてしまう。印象に残らないからだ。どちらも、神にひらめかせ授かった漫画である。今まですぐ忘れてしまった漫画と、なかなか忘れない漫画とくらべてみてどちらが多かったのか、どれも神に授けていただいた作品である。文句をいったらバチがあたるだろう。







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