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評者◆秋竜山
江戸文化そのものの大相撲、の巻
No.3535 ・ 2022年03月19日




■大相撲を国技館へ見にいったことがあったが、江戸文化そのものであった。場内の中央に丸い土俵があり、そこで力士による相撲がくりひろげられる。客はます席にすわって観戦している。問題は、ますがせまくて座ったきり身動きできなかった。これも江戸文化なのか。呼び出しの独特な節まわしの声で二人の力士が土俵にあがる。「東、○×山。西、凸凹山」。ひいきの力士が呼び出されると客席から歓声があがる。だからといって二人の力士は取り組むわけでもなく次々と伝統儀式を続けていくのである。
 西尾克洋『スポーツとしての相撲論――力士の体重はなぜ30キロ増えたのか』(光文社新書、本体八八〇円)では、相撲をスポーツとしてとらえていく。それが、相撲論となる。
 〈相撲は珍しい競技で、互いの呼吸が合ったところで勝負が始まります。(略)大相撲では、タイミングが合わなければ始めなくても良いとされているのです。逆に言えば、立ち合いで変化をしたとしても、双方の呼吸が合い勝負が始まっているため、片方が有利な体勢になってそのまま勝負が決まっても勝負は成立したことになります。ちなみに、このような形で勝負が始まるのは世界中でも相撲のみと言われています。〉(本書より)
 果たして、力士の強さはどれくらいのものか。私の子供の頃、学生相撲(十両)と村の若い青年の七人が村で取り組みを行ったことがあった。
 勝負はアッ〓 という間についてしまった。十両の力士がこれだけ強いのだから、横綱となると、とてつもない強さであろうと思える。横綱相撲の強さという。
 〈大相撲には一門と呼ばれる相撲部屋のグループがあります。これは古典芸能や将棋、囲碁といった世界にも存在するものです。日本相撲協会には「出羽海一門」「二所ノ関一門」「時津風一門」「高砂一門」「伊勢ヶ濱一門」の5つの一門があります。最近までは「貴乃花一門」もありましたが、こちらは消滅しています。〉〈相撲部屋の朝は稽古から始まります。これに合わせて起床しますが、地位に応じて稽古の時間が異なります。土俵の準備は新弟子が行いますが、実践稽古である申し合いや三番稽古は下位の力士から順に行います。実力差があると稽古にならないからです。序ノ口や序二段の力士の申し合いが終わるとぶつかり稽古を行い、次は三段目や幕下の力士の出番です。稽古が終わった下位の力士は場合によっては少し上位の力士と稽古をすることもありますが、基本的には「見取稽古」という言葉があるように、稽古を見ながら技術を盗むことになります。〉(本書より)
 以前、稽古をしているところを見学させていただいたのだが、あまりのはげしさに、並の人にはつとまらないと思った。この稽古がつとまらないということは、相撲取りにはなれないということである。横綱になると、番付に大きな字で書かれる。みんな、その大きな字で書かれることをめざしているのである。虫めがねなしでは見られない小さな字もある。それでも番付に書かれることを夢みているのである。







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