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評者◆秋竜山
年よりのため息、の巻
No.3532 ・ 2022年02月26日




■癖によい癖というものがあるだろうか。あるとしたらどのようなよい癖か、考えてみるに、思いうかばない。悪い癖ばかりである。きらわれることばかりである。たとえば、貧乏ゆすりだ。映画館など隣の席で貧乏ゆすりをやられたら、気になって映画どころではない。片足をカタカタと音をたててゆらす。そういえば、貧乏ゆすりは両足でカタカタ打ち鳴らすのではなく、片足だけのようである。いまにやめるかと思うと、やめる気配はいっこうにない。それどころか、ますますはげしくなる。そのような癖をもった人の隣へ座ったとしたら、もうつきあいきれず、その場から逃げだすしかないだろう。映画館で貧乏ゆすりをされると気になるのはなぜなんだろうか。シーンとした場内ということもあるだろうが、薄暗がりということだからだろうか。それに、あの連続的な、こきざみの音だろう。貧乏ゆすりというものは、やる側と、やられる側の二者によって成り立っているのである。やる側はやめたくても、やめられない。気持がよいからである。いけないと思い両手でゆすっている片足を押えるようにしてとめようとしても、今度はイライラしてきてストレスがたまりはじめる。やられる側が貧乏ゆすりにたえられないのはなぜだろうか。これまたやられている間はイライラが続く。やる側とやられる側が同じイライラをかかえこむことになる。貧乏ゆすりの音になんとも感じないヒトがいるだろうか。
 竹内一郎『やっぱり見た目が9割』(新潮新書、本体七〇〇)によると、
 〈癖で、他人に嫌がられるのは大別すれば二種類である。「音」に関するものと「動き」に関するものだ。(略)まず、主に「音」に関するものをあげてみよう。正確にいえば「音を伴う動作」である。他の人が仕事に集中したいときに、邪魔になる。聞きたくなくても、勝手に入ってくる。次のような音を出す癖が、嫌われるものの代表格である。
 ・パソコンタイピング(とりわけ、一区切りがついた後の「エンター・キー」)
 ・電話の受話器をガチャリと置く
 ・食べるときクチャクチャと音を立てる咀嚼音。口内で舌や頬の筋肉を使ってクチャクチャと音を立てる音
 ・キー・ホルダーを机の上にガチャリと置く
 ・筆記具の断続的なノック音(ボールペンやシャープペンシルのカチカチなど)
 ・筆記具の胸にさすためのピンの部分をピンピン弾く音
 ・ため息
 ・スリッパの歩くときのパタパタした音〉(本書より)
 特に「クチャクチャ音」は自分で気づかないで音をたてている。クチャクチャ音をたてる者の身になってみると、音を殺して食べるということは食べた気がしないのである。それと同様、「ため息」である。このため息は立ち上がる時、「ドッコイショ」と声を出してしまうのと似ている。〈自分の戒めとして「ため息は命を削るかんなかな」という川柳を覚えておくとよいだろう〉と、本書でいうが、どうしても口から出てしまう。たとえマスクをして口をふさいでいてもだ。第一、その声を発しないと立ち上がれないのだから。そして、年をとると皆そうなってしまうのだから仕方ないことでもある。







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