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評者◆伊達政保
芸能とは「非・常民」が産み出したもの――『朝倉喬司 芸能論集成』編集委員会編『朝倉喬司 芸能論集成――芸能の原郷 漂泊の幻郷』(現代書館・本体一二〇〇〇円)
No.3531 ・ 2022年02月19日




 昨年出た本の中で圧巻は『朝倉喬司 芸能論集成――芸能の原郷 漂泊の幻郷』(現代書館)だ。なんと千ページ弱、本体1万2千円という大著である。2010年に亡くなった朝倉喬司は、週刊誌の犯罪ルポなどから出発し、ルポライターとして犯罪と芸能を軸に健筆をふるい、ノンフィクション作家として多くの著作を遺した。一方、週刊誌契約記者の労働組合「働く記者の会」を結成、合わせてトークイベント「群論」を開催。河内音頭に惚れ込んで「全関東河内音頭振興隊」を結成、錦糸町河内音頭大盆踊りの基礎を築く。裏表紙の五木寛之氏の文に「朝倉喬司はサブカルチュアの先行者ではない。アンダーカルチュアのオルグであった」とあるが、まさに行動するライターだった。
 本書は初の芸能ルポルタージュ『バナちゃんの唄‐‐バナナ売りをめぐる娼婦やヤクザたち』(情報センター出版局、1983年)、評論集『芸能の始原に向かって』(ミュージック・マガジン社、1986年)、『流行り唄の誕生‐‐漂泊芸能民の記憶と近代』(青弓社、1989年)、座談集(三波春夫/平岡正明/岡庭昇/朝倉喬司〔みな故人となってしまった〕)『遠くちらちら灯りがゆれる‐‐流浪芸の彼方に転形期をみる』(らむぷ舎、1985年)の今や絶版となってしまった著作を完全収録し、加えて音楽誌「バッド・ニュース」での連載や雑誌掲載の論考、竹中労、日名子暁などとの対談や赤坂憲雄、五木寛之、沖浦和光などとの鼎談をも収録して、まさに朝倉芸能論の集成と呼ぶに相応しい本となっていた。
 著者の文を各単行本の初版時から読んできたものにとって、犯罪ルポの手法が芸能論にも生かされていることがよく分かる。その地域の風景から地層へそして土地の歴史へと著者の視点は掘り下げていく、人間についても同じだ。人の顔が見えない民衆史観では芸能なんぞ分かるはずもない。『バナちゃんの唄』ではそうしたルポルタージュ手法によるロングドライブ奏法ともいうべき文体での展開がよく現れている。『芸能の始原に向かって』に収められた「大阪の闇をゆさぶる河内音頭のリズム」では週刊誌犯罪ルポを思わせる冒頭から一挙にインタビューを交えた河内音頭論に突入していく。雑誌掲載時これは「河内音頭宣言」だと多くの読者が感動したのだ。『流行り唄の誕生』は逆に資料を読み込む中から人間を挟り出していく。『遠くちらちら……』は三波春夫を中心とした座談会だが、平岡、岡庭、朝倉の論客がたじたじの三波の芸能に関する知識の奥深さと、表現者の姿勢に驚かされた。
 他の論考や対談を通し、一貫しているのは芸能とは「非・常民」が産み出したものという







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