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評者◆秋竜山
なつかしくてさびしい、の巻
No.3528 ・ 2022年01月29日




■子供の頃、よく唄っていた歌に、「かごめかごめ」という歌詞の歌があった。今の子供たちは、まったく唄うこともなく、むしろそのような歌など知らないだろう。千葉公慈『知れば恐ろしい 日本人の風習――「夜に口笛を吹いてはならない」の本当の理由とは――』(河出文庫、本体六六〇円)では、〈謎が謎を呼ぶ不思議な歌詞〉で、
 〈あそび唄の定番といえる「かごめかごめ」は、謎多き唄である。その最大の要因は、この歌詞に出てくるひとつひとつの言葉にある。意味の相反する語が、交互に連続して登場するからだ。〉(本書より)
 私が子供の頃、このような歌はもっぱら女の子たちが遊びの中で唄われた。昭和二十年代、広場で唄いながら遊ぶ女の子たちは男の子を遊び仲間にいれることなく、男の子たちも関心はなかった。女の子たちの遊びであったが、今ではそのように遊ぶ女の子たちもいない。このような歌そのものをしらないのである。「かごめかごめ」という歌を唄うことを禁止されたためでもなく、自然と唄わなくなった。
 〈かごめかごめ
  籠の中の鳥は
  いついつでやる
  夜明けの晩に
  鶴と亀がすべった
  後ろの正面だあれ
 ――あそび唄の定番といえる「かごめかごめ」は、謎多き唄である。その最大の要因は、この歌詞に出てくるひとつひとつの言葉にある。意味の相反する語が、交互に連続して登場するからだ。〉(本書より)
 私の記憶の中でのイメージでは、夕方近くになると女の子たちが集まって遊んでいた。
 〈「籠(封じるもの)」←→「鳥(封じられるもの)」
 「かごめ(屈め)」←→「でやる(出やる)」
 「夜明け」←→「晩」
 「鶴」←→「亀」
 「後ろ」←→「正面」
 こうした意味ありげな対話のあいだに、特定不可能な疑問符「いついつ(時間)」と「だあれ(人物)」、さらにネガティブなニュアンスの他動詞「すべる」が入り交じった。独特の童言となり、唄全体に不安定感を醸し出している。また、それこそが遊戯を成立させる要件だといえるだろう。
 このように解釈が定まらないため、「かごめかごめ」の歌詞の意味をめぐっては、実にさまざまな憶測を呼ぶことになる。
 ①籠の中の鳥を赤ちゃんに見立てた流産説。
 ②遊女と男衆が脱走する逃走説。
 ③罪人が斬首のあと、後ろの正面をグルッと向く処刑説。
 (④⑤略)
 ⑥鶴と亀を性器にたとえる色っぽい説。
 (⑦略)
 果ては⑧徳川埋蔵金の暗号説。⑨略、論説紛々である。〉(本書より)
 風習は一旦とだえると、復元することはないだろう。あの当時の遊んでいた女の子たちを思い浮べると、日本の原風景でもあった。なつかしさとさびしさがこみあげてくる。







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