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評者◆伊達政保
時代を超越するライブがこの映画で現在に蘇った――クエストラブ監督の映画『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』
No.3526 ・ 2022年01月15日




■1969年にニューヨーク市ハーレムで6週末にわたり30万人以上の観客を集めた音楽フェスティバルの未公開映像が発掘され、ミュージシャンであるクエストラブ監督のドキュメンタリー映画『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』として公開された。ハーレム・カルチュラル・フェスティバルと名付けられ、ブルース、ゴスペル、ジャズ、ファンク、アフリカ、ラテンなどブラック・ミュージックの錚々たるミュージシャンが出演したこの大イベント。同時期に行われたウッドストック・フェスティバルにちなみ「黒いウッドストック」とも呼ばれた。撮影されたビデオは放映されることなくお蔵入り。
 60年代、公民権運動は高揚、歌は世に連れ世は歌に連れと言うが、黒人運動と黒人音楽は相互に影響を与えながら発展していく。一方65年ハーレムが産んだマルコムX暗殺、68年には非暴力直接行動のキング牧師暗殺、全米都市に黒人暴動が拡大。運動形態も暴力を含むあらゆる手段を使った直接行動へ変化していく。また呼称もニグロから誇りを持ったブラックへ、ブラック・パワー、ブラック・イズ・ビューティフルという言葉がそれを現し、この映画からそれらを見て取れる。なんと会場警備は武装したブラック・パンサー党員が行っているのだ。ニューヨーク市のリンゼイ市長は人種融和政策(黒人暴動の抑制)のためこのフェスを後援し、ステージでも挨拶をした。警察は当初警備を断ったが後にブラック・パンサーと共に会場警備。翌70年には警察とブラック・パンサーは全面衝突、銃撃戦となる。69年夏の一時的に平穏な時期に行われたフェスでもあったのだ。
 ステージでは19才(オイラと同い年!)のスティービー・ワンダーがドラムソロを交え次の音楽ステップを感じさせる演奏。白人のポップスを歌うとして、白人黒人双方からバッシングされたフィフス・ディメンションが当時のトップ・ヒット曲「アクエリアス」をソウルフルに歌い上げる。ハービー・マンとフリージャズ・ギタリスト、ソニー・シャーロックのジャズ。ゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンとザ・ステイプル・シンガーズのメイヴィスとの共演は圧巻。時代に先駆けて人種とジェンダーを混合したスライ&ザ・ファミリー・ストーンのサイケデリック・ファンク。スパニッシュ・ハーレムから勃興し始めたサルサを体現するレイ・バレットとモンゴ・サンタマリア。マックス・ローチのドラムとアービー・リンカーンの歌。ニーナ・シモンの準備は、覚悟は出来てるのメッセージに聴衆は歓声で答える。時代を超越するライブがこの映画で現在に蘇ったのだ。







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