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評者◆秋竜山
お見合いは笑いの宝庫、の巻
No.3522 ・ 2021年12月04日




■お見合いは笑いの宝庫である。喜劇である。人生で一度は経験しておくべきであろう。つまり、喜劇というものはこういうものであるということを身をもって体験しておくべきだ。そして、笑いというものはこういうものであるということを、のの字によって知るべきだろう。マンガなどでよく描かれているが、向かい合っている二人が相手の顔を見ず、タタミにへの字を書いたり、むしったりするさまは笑わさずにはおかない。「あの……」「ハ、ハイ」「あの……」「ハ、ハイ」「ごしゅみは……」「ハイ、読書に映画かんしょうです。あなたは……」「ハイ、私も読書に映画かんしょうです」「そーですか、気が合いますね」「そーですね」「読書って、どのような本を」「ハイ、日本文学全集に、世界文学全集など……」「私も、そーなんです、気が合いますね」。これがお見合いの定番の会話である。「ハイ、マンガです」なんて答える人はまずいないだろう。たとえマンガ家であったとしても、マンガしか読んだことのない人であったとしても、絶対に答えるべきではないだろう。教養とは何ぞやという問題を投げかけていることになる。しかし、相手が「私もマンガです」と、答えたとしたら別であるが。
 丹羽宇一郎『死ぬほど読書』(幻冬舎新書、本体七八〇円)では、
 〈たまにしか本を読まない人が読書の習慣を身につけようとするとき、気をつけないといけないのは、背伸びをしないことです。最初は自分の知識や教養のレベルに見合ったもののなかから、好奇心をくすぐるものを選ぶことです。いきなりレベルの高いことをやっても、挫折するのがオチです。(略)たとえば、昨日まで漫画と週刊誌くらいしか読んでいなかった人が、今日からちゃんとした本を読むぞといって、いきなりヘーゲルやマルクスを読み出しても、頭が混乱するだけです。読んでいても何が書いてあるのか理解できず、10分もしないうちに挫折するでしょう。(私の経験からいって、まさにその通りであります。その前にねむくなって寝てしまうのでした)軽いエッセイ、あるいはミステリーや官能小説にしか興味が湧かないというなら、他のものには目もくれず、それを徹底して読めばいいと思います。嫌というほど読めば、いずれ興味は別のものに向かいます。〉(本書より)
 だからといって、正直にウソはいえないとばかりに、本当のことをいってしまい相手に、「エッ!! マンガですって」なんて思われたとしたら、このお見合いは失敗したと思ってよいだろう。失敗をとるか成功をとるか。やっぱり誰もが成功をとるにきまってる。しかし、その成功もすぐバレてしまうだろう。めでたくゴールしたとして、「あら、あなた、あの時はウソをついたのね」と、いうことになる。しかし、心配することはないだろう。「実は、あたしも、あなたと同じ本しか読んでないけど」と、なったら、しめたものである。本棚には、その手の本ばかりが並べられている。夫婦そろってそのような本を乱読することになる。二人がよければ、それでよいわけである。







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