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評者◆凪一木
その120 問題の続き
No.3521 ・ 2021年11月27日
■会社から郵送されてきた、恐らくは「適正を見る」問題の続きである。
ISO専門コンサルタント会社の一つ、(株)環境セキュリティ・システム研究所のHPにはこうある。 〈ビルメンテナンス業とは「客先に人を派遣し、客先の設備を清掃・管理する業務」である。よって、マネジメントシステムを導入する範囲は、「客先から委託を受けた“業務”そのもの」が中心となる。〉 日本規格協会グループのHPにはこうある。 〈ISO45001は、厚生労働省の「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」や中央労働災害防止協会、建設業労働災害防止協会などの業界が定めるガイドラインをはじめ、多くの標準(規格類)が既に存在しております。ISO45001はそれら従来の法令や規制と矛盾しない、かつ、労働者の安全を第一とした規格とするべく議論が進められて、二〇一八年三月一二日(月)に発行〉 まず『対訳・ISO45001‥2018(JIS・Q45001‥2018)労働安全衛生マネジメントの国際規格[ポケット版]』(日本規格協会編)が七五〇〇円で発売されていて、副読本として『ISO45001‥2018(JIS・Q45001‥2018)労働安全衛生マネジメントシステム要求事項の解説』(中央労働災害防止協会監修)が六〇〇〇円で発売されている。 実は前回紹介した自衛消防の教科書と問題集は、独占的というよりも、完全独占状態で、受験料を数倍上回る金額で、しかもほぼそれなしには合格できないものとして販売されている。書店にはない。消防署の方面本部の内いくつかしかない試験会場か、ネット上の「協会」宛に申し込むしかない。過去の受験者は誰もが買って持っているはずなのに、アマゾンに出ている品は、中古品で、新品より高い。 ISOの本もまた、必ず当該規定を順守する会社に常備させるものとして存在する。 この順守について審査している会社がある。日本マネジメントシステム認証機関協議会(JACB)所属の(株)ジェイ・バックである。会長は日本におけるISO導入の立役者という。 〈ISO認証取得は、企業にとって投資である〉を謳い文句に、審査の申し込みを受け付け、審査後の判定会で承認されると、認証登録、維持、更新という流れだ。いつからか、次々と「お金」と「認証」のかかる仕組みが増えている。この流れに我々は、抵抗できないのか。真綿で首を絞められるように、業界も会社も、その下で働く社員もバイトも、家族も消費者も、付けを支払わされている。 たとえば中災防のホームページを見ると、こうある。 〈ISO45001とは、国際標準化機構(ISO)が二〇一八年に策定した労働安全衛生マネジメントシステム(以下、「OSHMS」)の国際規格です。(中略)働く人の労働に関連する負傷と疾病の予防および安全で健康的な職場の提供を達成するためのOSHMSの仕組みとその運用を要求しています。〉 多くの会社のHPには概ね、同じことが書かれている。我が社T工業のくれたパンフレットではこうだ。 〈当社で働く人々が、労働に関係して負傷したり病気になることを防止し、安全で健康的な職場を提供することを目的とした仕組みです。〉 ポイントは、「安全で健康的な職場」である。 ビル管の試験でもそうなのだが、ビル管法や、憲法、労働安全衛生法、消防法などに関する問題は、条文の一字一句を完全に覚えさせる問題であり、間違い探しのようなところがある。意味として問題はなくとも、間違いは間違いとなる。 たとえば憲法二五条ならば、〈国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。〉という文章が正しい。 このうちの「生活部面」が「国民」となっていたり、「公衆衛生」が「生活環境」であったりしては、間違いなのである。たとえば、「すべての国民は、個人として尊重される」などという例文があっても、一見よさそうであるが、そんな条文は存在しないので、これも間違い。そうすると、個人として尊重されない国なのかよ? と突っ込みを入れたくなるのだが、そういう人物は、この国や、この社会、或いは奴隷制を強いるような会社には不要なのだ。したがって、会社から送られてきた一〇問の問題も、慎重にならざるを得ない。 第二問はこうだ。〈ISO45001は、労働安全衛生マネジメントの事で、当社で働く皆さんの安全で快適な職場づくりを進めるために構築されたシステムである。〉 一見、〇にしか読めない。何か×になる要素があるようには思えない。しかし、T工業自体のパンフレットや、中災防、その他のHPを見ると、「安全で健康的な職場」と書いてあるではないか。「安全で快適な職場づくり」と記されているこの問題は、いわゆる「引っかけ」ではないか。「快適」という一見よさそうな言葉で、不正解を釣っているのではないか。そう考えてもおかしくない。 どうにも、この手の問題形式や、マニュアル、おかしな標語、多用する印鑑、あまりにも無駄で、むしろ仕事の出来ない人間に有利で、サイコパスや馬鹿な上司に上手く利用されやすい仕組みが出来上がる構成に見える。 「PMS理解度確認テスト」の方の一〇問にはこうある。 〈亡くなった方の情報は個人情報には当たらない。〉 じゃあ、故人情報なのか。などという突っ込みは置いておき、これも一見、〇に見える。だが引っかけではないのか。遺族の個人情報につながる場合や、地方自治体の保護条例によっては、故人の情報は、個人情報に当たるからだ。 総務省のHPを見ても、(個人情報保護法での)〈「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名等により特定の個人を識別することができるものをいいます(第2条第2項)。〉とあるものの、その後に、〈死者に関する情報であっても、当該情報が遺族等の生存する個人に関する情報でもある場合には、生存する個人を本人とする情報として、個人情報に当たることになります。〉と書かれてある。 したがって、問題文は、「亡くなった方の情報は個人情報にあたらない」として、例外規定を書いていないので、×である。だが、おそらくは○なのだ。 〈いつでも連絡先が確認できるように、プライベート用の携帯電話に顧客担当者の電話番号を登録しておいた。〉 これも正解は×なのだろうけど、現実にこの通り仕事をしている人間は少ない。 建前と本音の社会が如実に現われ、下らないアリバイ作りと、表向きの清新さに、裏の出鱈目さ、これらが薄っぺらく渦巻いているのがビルメンテナンスである。 いつまで続くのか。日本の会社ごっこ。私は苦言だらけの回答を提出した。 (建築物管理) |
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