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評者◆小嵐九八郎
若い人のみならず中高年も……色川大吉著『平成時代史』(本体二六〇〇円、アーツアンドクラフツ)
No.3516 ・ 2021年10月23日




■色川大吉氏が亡くなられた――新聞によると9月7日である。東京帝大の学生の時、学徒出陣で海軍へ、特攻艇の基地に送られていたのだから生死を見つめ、強靱な精神力を培っただろうし、敗戦後は、民衆から見つめた歴史、一人一人の歴史から普遍を見る歴史の考え方を具に示し、右派、右翼からの嫌がらせや妨害などを跳ね退け、平和への実践的活動も粘り強くやり抜いた。96歳まで生きたことに頭を垂れるけれど、死の直前まで、文章を書く熱意は、色川大吉氏の信念とは異なるだろうが“神がかり”的であった。
 また、凄い歴史家、知識人は、書斎や大学の研究室や図書館に籠もるだけでなく、暇ができればスキーや海外旅行をもすると教え、我ら駄目作家に発破をかけ、励ましてくれた。
 正直に記して、少しは疑問はあるけれど、学生運動とその延長線を二十五年とウン年やった者にも、マルクスの歴史観と共に人人が生きている色川大吉氏の著書を思う。我らの若い時代に感動した『明治精神史』、『ある昭和史――自分史の試み』などを今の若者が読んでくれたらなアと強く、強く、思ってしまう。
 しかし、今の今、2021年9月に、死の直前まで執筆し、加筆し、修正した色川大吉氏の本がある。8月15日に発行されたばかりだ。
 それは『平成時代史』(アーツアンドクラフツ刊、本体2600円、むろん、色川大吉著)だ。
 『平成――』と“平成”にこだわって映るが、当たり前、著者は天皇制への真っ向からの批判者だった。当方は、この時代の小説を書こうとして編年史があるので飛びついた――三十ウン年前は講談社から『二万日の全記録』(全11巻)が出ていて実に助かったのだが、今のところこれほど詳しい本は出てない。
 然れど、色川大吉さんの「編年史」での、年年の事件、できごと、流行への考えに引き込まれ、やがて、新聞や雑誌へと載せた「ドキュメント」の独特の諸相への思いに魅かれ、う、う、参ってしまった。しかも“昭和史”と区別された“平成史”の世界史との対照まで記されている。若者よ、ここ、大事。
 若い人のみならず、そう、中高年も、読んだ方が……。







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