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評者◆秋竜山
扇子がピシャリ、の巻
No.3511 ・ 2021年09月11日




■夫婦ゲンカは、お互いに負けてはいない。相手が悪いということで成り立っている。引っかいたり、ひっぱたいたり、けとばしたり。
 夫婦マンザイは、夫婦ゲンカとはちょっと違う。女房の持っている扇子一本だけで進行する。
 「なんだ」
 「なにが、なんだ」
 「だから、なにがなんだというんだ」と、意味がわかったようなわからんような言葉の応酬である。二人以外は意味はわからない。女房は手にしている扇子で亭主の頭をピシャリとやる。ところが、夫婦ゲンカには扇子などない。場合によっては、女房はカーッとなって、カナヅチを持っていたりする。それで頭を叩かれたら、たまったものではない。そのことをみこんで亭主はナベを頭にかぶっていたりする。カーン!! と、音が響く。夫婦マンガは、ピシャッ。夫婦ゲンカは、カーン。夫婦マンザイは扇子一本で笑いをとる。どっちかが欠けてもマンザイは成立しない。マンザイができないと一人で漫談となる。漫談は自分で自分の頭をピシャリ。あるいは、カーン。
 山田昌弘『新型格差社会』(朝日新書、本体七五〇円)では、
 〈社会学では、地域のボランティアの活動や社会活動面を研究する分野があります。(略)ボランティアや地域活動というのは「助ける余裕がある人」と「助けを必要とする人」の両者がいて成り立つものです。「助ける余裕がある人」が多くいて、「助けを必要とする人」が少ない自治体をモデルにして、いったいどうするということでしょう。「助けてほしい人」は、彼らとは無縁のエリアに住んでいます。自分と同じく「助けてほしい人」ばかり集まっている。〉(本書より)
 ヒトは生きていく上では誰かに助けを求めずにはいられないのである。そのよい例が夫婦である。そして女房の手にはいつも扇子がにぎられている。それが夫婦マンザイである。夫婦マンザイとは女房の扇子が亭主の頭の上でピシャリと音をたてることである。「助けてくれ」と、亭主。すると、女房が扇子でピシャリと叩く。亭主の一言に扇子がピシャリ。
 「何をするんだ」
 またしても、ピシャリ。そして、又してもピシャリ。黙っていてもピシャリ。扇子でピシャリピシャリと叩き続けても夫婦マンザイは成立するのである。
 「あなたは、どうして、あたしに助けを求めるのよ」
 そして、ピシャリ。
 たまりかねて亭主が女房の扇子をとりあげて、女房の頭をピシャリ。これに対して女房は怒って、楽屋へ引っこんでしまう。舞台に一人残こされた亭主が「オーイ!! 今度は本当に助けてくれ」と、叫ぶので、ある。







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