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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」⑫
No.3511 ・ 2021年09月11日




■昨年、新型コロナウイルスの感染拡大が第二派のピークを迎えようとしていた夏ごろ、私がもっとも恐れたのは、感染者が医療のセーフティネットから見捨てられ、自宅で孤独死を余儀なくされるケースが日常化していくことだった。だが悲しむべきことに、いま私のそうした懸念が現実のものになっている。
 毎日のように公表される新規感染者数や重症者数そして死亡者数の数字をみていると、不謹慎なことに、それがどこか遠い世界で起こっている戦争の、負傷者数や戦死者数の政府広報を聞かされているような錯覚に、私はしばしば陥った。
 なにかとてつもない“戦争”が進行している。敵の軍勢は強力で、対する私たちの政府はへっぽこで、これにまったく太刀打ちできていない。いま、改めて「アベ政治」のもたらした惨害というものを、私たちは目の当たりにしているのである。
 「アベ政治」とは、この国の権力悪の象徴であって、それは私たち国民の命を危険にさらすことはしても決して守らないという裏の顔を、私はくりかえし警告してきた。その直系の継承者である現在の菅政権は、このコロナ禍で危機対応力の無さをかんぜんに露呈している。その特徴は、問題の本質に現実的に対応することをせず、うわべだけの弥縫策で国民の目をそらし、質問や追及には決してまともに答えず、自分等の権力の維持だけはけっして手放さないというものだ。
 コロナの感染者が爆発的にふえ、中等症からいっきに重症化する事例が多数報告されているとき、最優先されるべきは目の前で苦しんでいる患者の救命であるのは当然だろう。しかし、政府がひとつ覚えのように打ち出すのは、相変わらずワクチン接種と人流の抑制といった効果も定かでない事前予防策なのである。
 いまもっとも必要とされるのは、いまここで苦しんでいる人たちの命の救済だ。なぜそこに全力を傾注しないのか。原稿を読み飛ばしてもいい、漢字が読めなくてもいい。とにかく目の前の命を救ってほしい。
(つづく)







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