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評者◆秋竜山
なさけない総理大臣、の巻
No.3508 ・ 2021年08月14日




■先週に引き続き、竹内薫著、嵯峨野功一構成『教養バカ――わかりやすく説明できる人だけが生き残る』(SB新書、本体八〇〇円)から。「うそ、らしいですよ」とか、「ほんと、らしいですよ」とか、いわれる場合がある。この「~らしい」とは、「そう、らしい」と、いうことである。これも立派な日本語である。
 〈らしい、(動詞・形容詞および助動詞「せる・させる・れる・られる・ない・たい・た・ぬ」の終止形、形容動詞の語幹、体言および助詞「の」に付く) (1)よりどころをふまえて、遠まわしに断定する意を表す。「来る―」「静か―」「だめだった―」 (2)(接尾)「体言に付いて形容詞をつくる」いかにも…にふさわしい、の意を表わす語。「男―態度」〉(国語辞典より)
 「~らしさ」には、ふりまわされる。信じてよいのか、悪いのか。だからといって信じないわけにはいかない。風評にも似ている。若い時、「彼女、お前のこと、好意を持っているらしいぞ」と、いわれたのだが、まったくのでたらめであった。若さとは、そのくりかえしであった。そんなバカなことあるわけないと、わかっていても、信じたくなるのが人情というものだ。
 〈政治、経済、環境、領土、人間関係。世の中にはいろいろな問題があります。(略)ネットでコメントするときに、「~らしいですよ」という人がいます。この「らしい」は曲者です。いわゆる伝聞情報で、自分が調べたものではなく、人づてに聞いたものです。伝聞情報とは、情報の裏を取ることなく、責任も負わない(と思うことができる)のです。あなたが「~らしい」と耳にしたら、その情報は怪しいとまず疑ってください。〉(本書より)
 情報社会には信用がおけないということになる。「お前のいうことは、いっさい信用できない。たとえ夫婦間でもうたがうべし」、ということになったら、どーしましょう。〈くれぐれも「らしい」情報にはお気をつけください〉と、なった時、あらゆる面で「~らしい」と、いうことが成立する。新聞のニュースも、「~らしい」と、いうことになる。信用するなということだ。言葉の最後に、「~らしいですよ」を入れた会話は、まるでマンザイを聞いているようなものだろう。「総理、ホントのこといってくださいよ」と、野党に追及される総理もなさけない。「ワタシはウソは申しません」と、いった総理がいたが、それこそが大ウソである……とか。
 〈属人思考は「権威がある人がいっているから正しい」「あの人に間違いはない」と、正しいか正しくないかの基準が「人」に属していることです。(略)日本人は「属人思考」をする人が多いそうです。〉(本書より)
 考えてみると、師弟関係は、弟子は師の考えをすべて肯定しなければ成りたたないわけである。師がいうことなすことをすべて弟子が「先生、それは間違っています」と、くりかえしたら、どーなるのか。師でも弟子でもないということになるのである。師が、白といったら弟子も白と受けいれることである。
 中国禅の公案に「香厳上樹」と、いうのがある。人が高い木にのぼって口で枝をくわえてぶらさがり、手で枝をつかまず、足も木をふまえていないような場合、木の下から質問者が「ダルマがインドから中国にやって来て伝えようとした禅の極意は何か?」もし、答えなければ、その人の質問にそむくことになる。もし、答えれば木から落ちて命を断つことになる。答えとしては、「無言による真理は無言によって答えるべきだ」と、なる。総理大臣も、それくらいのことをいってほしいものだ。このようなやりとりで国会が成立するか。無言で聞くしかないだろう。







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