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評者◆秋竜山
雨の降る日は天気がよい?、の巻
No.3505 ・ 2021年07月24日




■「雨の降る日は天気が悪い」とは、江戸川柳であるが、笑ってしまう。お笑い川柳かと思ったら、そーでもないようだ。まじめな川柳である。雨の降る日は天気が悪いとは、あたり前なことをあえていうことによって笑えてくるのである。しかし、よく考えてみると、天気というものについてであって、果たして、雨の降る日は天気が悪いのかどうかということである。雨の降らない日は天気がよい、というとらえかたに問題がある。天気のよい悪いに問題があるということだ。雨の降る日は天気がよい!! と、なぜいわないのか。
 ヒトは生活する中で、天気がよい悪いに左右されている。雨がほしい日にとっては雨降りは願ってもない天気のよい日ということになるだろう。雨ごいのため神にいのったりする。その場合は天気のよい日として雨降りであるということだ。しかしながら、雨降りはあまり好まれないようである。てるてる坊主をつるしたり、雨男とか雨女など、仲間うちで決めていやがられたりする。いわれる当人は大めいわくである。その反対の晴れ男とか晴れ女は大変よろこばれ当人もうれしがっている。
 ラジオでは天気予報というのがある。今日の天気予報は一〇〇パーセント当たる。神わざである。天気というものは神が決めるものであるからラジオの天気予報も自信たっぷりで放送している。昔は、ラジオの天気予報はよくはずれたものであった。そんな時、「あくまでも予報であって……」などといういいわけをしたりした。マンガなどでは、天気予報のアナウンサーが傘を持って家を出るのを見て、「今日は雨か」と、思うべきのを「今はいい天気だろう」なんて、いったりした。それほど天気予報がはずれたりしたからであった。
 大野晋『日本語練習帳』(岩波新書、本体七八〇円)では、
 〈「明日の天気は大丈夫だ」とか「まかせて下さい、大丈夫です」というけれど、「明日の天気はしっかりしている」「まかせて下さい、しっかりしています」とはいいません。また、慰めるには「そんなこと、大丈夫よ」というけれど、励ますときは「しっかりやりなさい」という。「大丈夫」とは、昔の言葉でいうと「ますら男」に当ります。「ますら男」とは「男の人、強い男」。マスは優る、増すと関係があって、ラは状態を示す古い言葉です。だから、「ますら男」とは「一人前の立派な男」です。「強い男は頼りになる」「安心できる男だ」ということから、「大丈夫」は「心配いらない」「まかせて安心」を意味するようになりました。「明日の天気は大丈夫、心配はいらない」「まかせて安心」を意味するようになりました。「明日の天気は大丈夫、心配いらない」〉(本書より)
 大丈夫といわれることほど、心強いことばはない。はずれても大丈夫!! と、いうことだ。「雨だろうが天気だろうが大丈夫、大丈夫!!」と、いうことだ。アレ? ちょっと待って、ということになる。天気というものは、雨をもふくめた表現ではないだろうか。晴れだけを意味するものではないのではないだろうか。はいていた下駄を宙にほうりなげて、「明日、天気になーあれ!!」は、「明日、雨になーれ」もふくんでいるのではないか。「明日、どっちにもなーあれ」と、いうことだろう。







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