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評者◆秋竜山
魚のためのメガネを考える、の巻
No.3502 ・ 2021年07月03日




■メガネ屋に魚のアジがやってきて、メガネを注文した。どのようなメガネだろうか。アジに限らず、魚のためのメガネについて考えねばなるまい。メガネ屋は考えた。魚の顔を見ながら考えた。魚の絵を描こうとした時、魚全体図をどのように描くかだ。正面から見た絵を描く人はいないだろう。もちろん魚に正面がないわけではない。水族館で魚を見ると、魚がこっちを向いていないわけではない。しかし、たいてい絵は横向きになるだろう。右側、左側。そして、顔も右側、左側。
 そのような魚にメガネをかけるとした時、メガネのつるをどこにかけたらよいのか。かける耳がない。右も左もだ。耳がない時、どこが耳のやくわりを果たすか。そして、顔ということになる。正面の顔だ。人間の場合は、正面に右左の眼がついているから問題はない。魚はどうか。
 布施英利『遠近法がわかれば絵画がわかる』(光文社新書、本体八八〇円)では、魚について。
 〈人間は(サルもそうですが)顔が平べったく、二つの目が前についています。馬や魚などの目の位置と比べてみて下さい。馬や魚では、目が顔の横についています。そのため、馬(つまり人間以外の哺乳類)や魚の視野は広いですが、人間のように両目による立体視ができません。ポイントは、この両目による立体視です。人間は(サルもそうですが)、二つの目で同じものを見ます。しかし目の位置が、顔の右と左にありますので、左右の目が見る視覚像にはわずかなズレがあります。そのズレを脳で情報処理することで、立体像ができあがるのです。人間は、両目(と脳)によって、空間や立体の形を見ているのです。〉(本書より)
 〈人は、一つの目と二つの目で世界を見ています。そこに見ている世界は、同じ一つの世界ですが、一つの目で見た世界と二つの目で見た世界は同じものではないのです。遠近法、つまり空間の奥行き、ということでいいますと、二つの目では、近い距離にある立体(=遠近)を見ています。一方、一つの目では、ある程度以上(たぶん手が届かないくらい)遠いところにある遠近を見ているのです。〉(本書より)
 魚を魚のような形になったのは、海で生きていくための進化だったからだろうか。これは納得できる。
 私はアジのひものは大好物である。そして、ひものの形も、当然の成り行きであろう。とはいうものの、ひものにされた自分の姿を見て魚は驚いただろう。魚の時の右側左側という形に、ひらきにされた時、表と裏とにされてしまった。そんな形で海を泳いでいたら、「オイ、お前。何だその姿は!!」と、魚たちも驚いたであろう。SFの世界である。人間というものはザンコクきわまるものだ。そんな、ひらきを塩加減がいいの悪いのといいながら食べているのだ。
 昔、ひらきの骨をノドに刺してしまい、一晩中ゲエゲエやったがとれず、次の朝病院へいって、医師に「ハイ、口を開けて」と、同時にアッと言う間に骨がぬかれた。「きれいなバラにはトゲがある」という。「おいしいものには骨がある」。と、思った。骨がノドに刺さるなどとは、魚の骨だけだろう。







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