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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」⑨
No.3499 ・ 2021年06月12日
■「アベ政治」流の文法では、言っていることと企んでいることがいつも大きくずれている。その最も顕著な実例が、安倍晋三ご本人による憲法改正にむけて語られた言葉のなかに見て取れる。本心を表には絶対に出さず、空疎な建前を押し立て、水面下ではあらゆる種類の政治力を駆動して、悪だくみの実現をはかる。
それにしても安倍はなぜにこうまで憲法、それも第九条の改正にこだわるのだろうか。彼はそんなに戦争がしたいのだろうか? これまでの言説をみる限り、彼は文字通り戦争がしたいのだ。だから、第九条を書き換えて、日本を“戦争のできる国”にしたいのである。でも一体なぜ? 戦争をしたら、敵に打撃を与える反面、味方にも犠牲や損害が出るのは避けられない。その言わずもがなのリスクを冒してまで、なぜ戦争がしたいのだろう? 理由はただひとつ、自分たちの政権基盤と権力維持のためである。どういうことか? わが国の戦後の保守政治は、日米基軸と経済成長を車の両輪として展開してきた。現在でも、その大きな枠組みは変わらない。だが、二十世紀終盤から今世紀にかけて、この展開には翳りがみえてきた。どちらにもそれぞれ限界が見えてきたのである。 “アベノミクス”は翳りの見えはじめた経済成長路線を延命させるためのパフォーマンスだった。そして日米基軸の一層の強化のために目ざされた選択が、この第九条の改正なのである。つまり軍事的な協力関係を増進することで、その目的を達成しようとしているのだ。そのいずれもが国民生活の向上や国家の文化的発展を真に企図したものではなく、自分たちの権力基盤の恒常化だけが、その中心の動機となっている。 その本音はいうまでもなく、有事の際にアメリカと軍事行動を共にする、つまり戦争することにあるのだ。 「海賊が財宝をねらってなにが悪い!」という台詞がむかし観たアニメにあった。安倍は「政治家が権力をねらって何が悪い!」と言いたいのだろうが、そうはいかせるものか。 (つづく) |
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