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評者◆秋竜山
俳句の鳥なりホトトギス、の巻
No.3496 ・ 2021年05月22日




■四コマ漫画は、たった四コマである。それなら俺でも描けると思ったりする。一、二、三、四である。三コマ漫画は、一、二、三のたった三コマだ。二コマ漫画がある。一、二の二コマだ。そして、一コマ漫画は一番簡単だろう。とにかく一コマでよいのだから。と、いわれて、「そーですね」と、答えるしかないだろう。そして、「なんにもわかってない」と、思う。それぞれの漫画について、説明するのもバカらしくなってくるから、やめる。俳句もそーである。五、七、五の文字によって成り立っている。指で数えながらその数の文字におさめればよいのだ。これとて、説明するのはバカらしい。もちろん私が説明されるほうである。そして、説明されたとしても、たんなる五、七、五の文字をうめればよいというものではないことはわかる。わかっただけでもしめたものであるだろう。
 復本一郎監修『俳句の鳥・虫図鑑――季語になる折々の鳥と虫204種』(成美堂出版、本体一五〇〇円)では、〈鳥の大きさ、虫の種類別、五〇音順で見出し季語がひけます。鳥の場合、総称的な季語は代表的な鳥の大きさで分類しました。〉。鳥で俳句といえば、なんたって時鳥ほととぎすだろう。五、七、五の中に時鳥といれただけで、りっぱな俳句になってしまうからだ。〈鳴き声〉も有名である。もっとも私は一度も聞いたことはない。子供の時、近所のおばあさんに聞いた。時鳥と鹿の鳴き声であった。そのおばあさんがいうのには、時鳥は「テッペンカケタカ、ホンゾンカケタカ」であるということだった。そして、鹿の鳴き声は、「カギーヨー」であるということであった。本書では、
 〈「キョッキョッ、キヨキヨキヨ」と大きく鋭い声でさえずる。「ピピピピ」と鳴くこともある。さえずりは、「トッキョキョカキョク(特許許可局)」、あるいは、「テッペンカケタカ、ホンゾンカケタカ(天辺かけたか、本尊かけたか)」などと聞きなしされる。「鶯は玉を転ずるが如く、時鳥は帛(絹のこと)を裂くが如し」と評される鋭い声である。(略)万葉の時代からすでに夏の重要な季語であり、「暁に名告り鳴くなるほととぎすいやめづらしく思ほゆるかも」(「万葉集」巻十八・大伴家持)、「古今集」では「郭公鳴くやさつきのあやめ草あやめも知らぬこひもするかな」(「古今集」巻十一、詠み人知らず)など、(略)〉(本書より)
 〈ほととぎす声横たふや水の上 芭蕉〉
 〈ほととぎす大竹薮をもる月夜 芭蕉〉
 〈ほととぎす一二の橋の夜明かな 其角〉
 〈名のれ名のれ雨しのはらのほととぎす 蕪村〉
 〈山々は萌黄浅黄やほととぎす 正岡子規〉
 〈夏の動物の最重要季語といってさしつかえなく〉(本書より)
 と、ある。
 うまいぐあいに、「ほととぎす」とは五文字におさまっている。やはり俳句の鳥である。この五文字さえいれれば俳句になってしまう。
 〈ホトトギスは、鳴くとき口の中が赤く見えることから「血を吐いて鳴く」といわれた。〉(本書より)
 玉子などをウグイスなどに育てさせるなどというチャッカリした鳥でもある。そして、一コマも二コマ漫画も三、四コマ漫画も、俳句とてそーだ。「何が何して何とやら」の浪曲の名調子さえふまえていれば、黙っていても出来上がるというものである。そんな簡単なことがムズカシイ。







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