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評者◆秋竜山
ウソのような江戸時代、の巻
No.3495 ・ 2021年05月08日




■ウソ発見器なるものがある。それが使われずにホコリをかぶっている。なぜか。あまりあてにならないからだろう。こういう時に利用すればいいのにと思うことがあるが、あまりあてにならないということが、本当かウソか。使われては困るからか。ウソを解明するためか。本当を解明するためか。信用できないウソ発見器では宝の持ちぐされだろう。女房が亭主にむかって、「この大ウソつきが!!」と、いった。「お前を世界一しあわせにするから」と、結婚をせまった。結婚していくら待っても、しあわせにならなかった。女房が怒るのも無理ない。男のいい分があった。あの時は本当にしあわせにするつもりでいた。それは、ウソではない。結果として、しあわせにならなかった。だからウソであったことになる。あの時、ウソ発見器なるものがあったら、その器械にかけてみたらよかったものの、そうすれば、ウソ発見器がなんと解答したか。
 日本史の謎検証委員会編『最新研究でここまでわかった 江戸時代 通説のウソ』(彩図社、本体九〇九円)では、江戸時代が新常識でくつがえされている。つまり、通説のウソをあばいているということか。ウソ発見器によってか。いや、そうではなく、学者による検証によってである。ウソ発見器はあてにならないからなのか。〈この検証は、ウソ発見器によるものである〉とでも、いってほしいものである。残念なことは、誰も江戸時代に行ったことからないということだ。詐欺師のように見てきたようなウソをいうたぐいか。本書を読んでいると、江戸時代そのものがウソの時代だったように思えてくる。つまり通説の江戸時代であるから、どうしてもウソになってしまうのか。〈大名行列が整然とした行列だったというのはウソ〉と、ある。
 〈通説――参勤交代の名物として、江戸の庶民が楽しみにしていたもの。それが大名行列だ。大名は藩の威信を誇示するため、数千人規模の行列をつくって江戸までの道のりを厳かに進んだ。道中の庶民は土下座を義務付けられた。風雨のなかでも行列が通り過ぎるまで、頭をあげることは許されなかった。〉(本書より)
 子供の頃に見た東映の時代劇ではおなじみのシーンであった。その映画によって、江戸時代の歴史を学んだものである。これがウソであったということだ。
 〈真相――慢性的財不足により、一部の大藩を除いて諸藩は豪勢な大名行列を行えなかった。町中以外では少人数で進み、道中は野宿で済ませるなどして費用を抑える藩は多かった。庶民は一部親藩以外の行列には土下座する必要もないなど、現代人が思っているほど厳しいルールがあるわけではなかった。〉(本書より)
 これがホントということだったとしたら、昔の映画にだまされた!! ということになる。映画は学問ではなくゴラクであると、ウソ発見器は答えるだろうか。ゴラクならば、ウソだといって怒るわけにもいかないだろう。そして、通説というのが曲者である。江戸時代の時は、誰も「これが江戸時代である」などと思ったこともなく、ただ江戸時代の空気を吸っていただけのこと。「江戸時代はこーであった」とつくり上げたのは、明治にはいってのことだろう。だから、通説の中での江戸時代はあたり前。そして、「ウソだった」もあたり前ということである。







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