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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」⑦
No.3492 ・ 2021年04月17日




■八年も続いた安倍政権が、コロナ・パンデミックの襲来と完全に軌を一にしてあっけなく消滅したことは、けっして偶然などではない。「安倍一強」などと持ちあげられ、“強すぎる官邸”を前面におしだすことで国内統治の法的・制度的基盤を強化し、政権運営や国会運営においても数の力を誇って盤石に見えたこの政権は、じつは見かけ倒しの張りぼてに過ぎなかったということだ。
 コロナ・パンデミックというこの“ホンモノの危機”にさいし、国内に敵なしだったはずのこの政権は、やろうと思えばなんでもやれたはずなのに、ほとんど実効的な対策を打てなかったのである。いわゆる“アベノマスク”などはその完璧な象徴であり、まちがいなく憲政史のなかに究極の愚策として標本化されるべきだが、その統治能力の無さが国民の生命を危険にさらすことにつながったのは明らかであって、この点は徹底的に指弾されるべきところだ。
 「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員も辞める」とひとこと言っただけで、周囲はその発言の不都合を隠すために忖度し、公文書の大規模な偽装工作に走ったことは、記憶に新しい。総理のこうした発言ひとつで、そのカバーのために関係者をして違法な行為にまで手を染めさせてしまうのが、百歩ゆずってこの政権の“強さ”なのだというなら、コロナ禍において「PCR検査の数を1日に2万件まで増やす」とおなじ人物が公式に空手形をきったのに、まったくそうならなかったのは何故なのか?
 公文書の偽装は人的な対応でやれたのに対し、PCR検査の実施件数の拡大は制度的な改革が伴わなければ、まったく実現の見込みが立たない事案であったからだ。つまり本来の政治力によってしか突破できない壁があったにもかかわらず、その行使を怠ったのである。
 それにしてもだ、病原ウイルスとしての「アベ政治」を終わらせるのが、文字どおりのコロナウイルスかもしれないという落ちはまったく笑えない。(つづく)







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