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評者◆小嵐九八郎
辺野古の闘いの強さの根源――「大絶滅の時代」、「阿波根昌鴻 態度としての非戦」(『世界』二〇二一年二月号より、本体八五〇円、岩波書店)
No.3483 ・ 2021年02月13日




■かつての自分達の駄目さを記すけど、1967年の10月8日の羽田でのヴェトナム反戦闘争の実力での突破口となる前後、同じ組織(三派全学連の構成の一つ、社青同解放派)やシンパの学友と麻雀を打つ時、考え込む省友に「おい、『世界』を読むぞ」と茶化し合ったことがある。“知性”より、遊び・ゲバルト・連帯みたいな“感性”を重要視していたわけだ。むろん、こんなのとは無縁に『ドイツ・イデオロギー』とか『経済学・哲学草稿』とかを黙黙と読んでデモの先頭にいきなり決起する仲間もいた。当たり前、当方も三十代近くなると、世間の左派やリベラル派がどんなことを問題視しているのかと、監獄暮らし以外の時は、書店で目次を追ったり買ったりした。
 んで、七十代半ばになった先日、『世界』2月号(本体850円、岩波書店)を手にした。「大絶滅の時代」と「阿波根昌鴻 態度としての非戦」の二つの特集をしている。前者は、コロナ禍に生きる我らのかなり身近となり差し迫ったテーマだからだ。メインの「生物多様性とは何か、なぜ重要なのか?」のタイトルの論にごーん。一昨年頃に出たハラリの『サピエンス全史』より、ある意味で地球史、人類史の危機について科学的に説いている。「新型コロナは自然の摂理」には、全身から納得の脂汗が出た。論者は国立環境研究所にいて、保全生態学・農業科学・ダニ学の研究者である五箇公一さん。
 後者――なお、阿波根昌鴻は「あはごんしょうこう」と読む――は、コロナ禍の波で闘いの形態が苦戦を強いられているとしても、沖縄の辺野古への米軍基地建設に、持続的に粘り強く、かつ人人の圧倒的支持と共感を得ている闘いのありようを知るための一つの核を勉強したいから、読んだ。沖縄には、延べ五、六回学びに行ったけれど、実は国際通りの裏あたりで飲んだり、鳩間島などで海と野原の良さにうっとりしていた。が、阿波根昌鴻氏の名は聞いていた。今回、この特集で彼の人生の略年譜や、生き方についてかなり詳しく分かり、頭を垂れた。沖縄戦で息子を失くした後、伊江島で米軍施政下によって家を焼き払われ「乞食行進」の闘いをしている。
 要はその組織論だ。琉大教授の新城郁夫さんが記している。「……自律的な合議制に則って集団が……」、あとは皆さん読んで下さい。辺野古の闘いの強さの根源が解ります。







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