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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」⑤
No.3483 ・ 2021年02月13日




■アメリカ大統領が共和党のトランプ氏から民主党のバイデン氏に交代となった。今回の交代劇は、選挙期間中から投票システムについての批判が現職大統領から出され、投票後は票数の集計から当確者の発表過程で不正疑惑の提訴がなされるなど、過去に例がないほど波乱を含んだものになった。
 ことに選挙結果確定後に、トランプ支持者等による連邦議会襲撃事件が発生するに及んで、私はこれまでとは背景のまったく異なる政治的危機が、まさにリアルタイムで火を噴くのを目の当たりにしたのだと直感した。一体これは革命なのか、反乱なのか、抗議なのか、暴動なのか……。およそ既成の概念では捉えきれないことがそこでは起こっていたのだ。
 当たり前が当たり前でなくなる事態、つまりこれまで普通だと思ってきた民主主義という安定したシステムの細部が、一挙に不安定化する姿を強烈に意識せざるを得なかったのである。その結果、一挙に信じられなくなったものが、私の場合「大衆の原像」という根強い理念の系だった。
 少なくともこれまでは、民主主義というものが最大多数の最大幸福につながる最良の政治手段だと信ずべき根拠があった。そこには有権者大衆の意思の総体が、何らかのかたちで選挙結果に反映されるという素朴な信憑が成立していたからであり、私の場合、それをメタレベルで構成する母体こそが「大衆の原像」だった。象徴的に捉えられた現実世界の“ファクト”とそれを言い直してもいい。
 いまや民主主義の敵どもは、間違いなくこの“ファクト”そのものを攻撃し始めたのだと言える。“ファクト”vs“オルタナ・ファクト”という構図の現実化した姿が大衆像の分裂の根底にはあり、社会の分断の病根はまさにそこに巣食うという思いを強固にしたのである。
 わが国での“親アベvs反アベ”はどうだろうか? 毒性の強い病原ウイルスには、治りにくい後遺症の残ることがある。「アベ政治」というウイルスに関してもむろん例外ではない。
(つづく)







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