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評者◆秋竜山
「オッサン」をめぐる攻防、の巻
No.3478 ・ 2021年01月09日




■北原保雄『しっくりこない日本語』(小学館新書、本体七六〇円)。先週に続いて引用させていただきます。
 〈これは台湾でのことです。南部の確か墾丁公園の中を歩いていたときの話です。(略)露店が道に並んでいました。そこの売り子が、私に向かって、「オッサン、どうですか」「オッサン、安いよ」などと、しきりに「オッサン」を連発するのです。「失礼な、オッサンなどと呼ばれる人間ではない。どこで誰から習ったのか」といささか憤慨しましたが、二、三メートル後から、妻と友人の奥さんが話し込みながらついてきていました。あれは確かに「オッサン」と聞こえましたが、「オクサン」だったのかもしれません。確かに妻たちではなく、私に向かって発せられていました。男性にも女性にも「オッサン」と呼び掛けていたのでしょうか。〉(本書より)
 確かに、「オッサン」と呼ばれると不ゆかいになるはずである。外国だからしかたないにしても、「オッサン」と呼ばれているのだ。「バカヤロー」。俺は「オッサン」ではないと怒ったとしても当然である。日本だったらそういうこともできるだろうが、なんせ外国である。言葉が通じないのが、余計腹だたしい。だとしたら、日本語でさけべばいいのである。言葉が通じなくても態度で通じるはずだ。
 私も四、五〇年も前になるが、海外旅行に先輩に連れていっていただいたことがあった。イギリスで英語ができない。そんな時どーしたらいいのかと連れと一緒に考えたことは、言葉を絵に描いてわたせばいいということになった。漫画家という職業柄、絵となるとお手のものである。ところが街でタクシーをひろったものの、泊まっていたホテルの名前がわからない。メモも持っていない。その時は大いに困ったものであったが、ホテル名はわからないが、相手にホテルであるということは伝わった。そこで何とかなったのであったが、先輩漫画家のエッセイにあったが、外国でスリッパがほしくなった。そこで、得意のマンガでスラスラとスリッパの絵を描いてみせた。そして、連れていかれたところが「トイレ」であった。驚いてよく考えてみたら、トイレへ連れていかれたとしてもナットクがいった。スリッパの片方の部分だけを描いてみせたというのである。片方だとトイレ、両方だとスリッパ。
 そういえば、昔、ブギウギで歌の中に〓オッサン、オッサンこれなんぼー、と、いうような歌詞があった。関西だと思う。関西だと「オッサン」は問題ないのだろうか。もし関東で「オッサン」となると、場合によっては大ゲンカになるところだ。
 「お尚さん」とか、「お坊さん」のことを「オッサン」と、いったように子供の頃の記憶としてある。田舎であるから、村でのオッサン。お坊さんのことである。「オッサン」の「サン」の部分を尻上がりに発音した場合はケンカになるだろう。馬鹿にしているということだ。「オッサン」の「サン」を尻下がりにいうと「お坊さん」のこととして呼んだことになる。村では「オッサンがめいりやした」なんていった。「オッチャン」と呼ばれる人もいた。もちろん愛称である。「親父」のことを「あんた」と呼べるのは女房であり、その後に「ったく」と、つく。まったく、どーしようもないんだから、ということである。それが親父の存在そのものである。







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