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評者◆秋竜山
親父のことを先生と呼ぶ、の巻
No.3477 ・ 2021年01月01日




■昔の父親は、こわかった。いばっていた。家族のものでも、父親をおそれていた。それで威厳があったというか、家族は父親を尊敬していた。戦前の父親である。戦後になったとたん、父親からタマシイがぬけて、カミナリであったのがカミナリ親父ではなくなってしまった。今の家における父親は昔の面影もなく、しょぼくれている。「アア、父親になど生まれてくるのではなかった」と、世の父親は深い溜息をつく。逆転したのは母親である。昔の小さくなっていた母親はとたんに巨大になった。そして父親を尻にしくことになる。家庭における父親の存在など、どこにもなく、まさに母親時代となる。女房の「あーた!!」と、いう声に「ハイ」と、亭主は答える。子供たちは、そんな光景を毎日見ているから、「そんなものか」と、父親を馬鹿にする。それがいいのか悪いのか。それが現代における情けない父親の姿というか実態である。「元気を出せ!! 父親」と、いうような呼び声をあげた著名人のグループもいたが、かけ声だけで空気がぬけてしまった。駄目になってしまった父親はもう永久に元どおりにはならないと思わざるを得ない。やはり、昔、カミナリ親父の時、流行したのが、「のんきなトウサン」というマンガであり、歌まであったようであった。まだ私など生まれていなかった時代であったから記憶にもとぼしい。子供の頃のかすかな記憶である。〽のんきなトウサン、おん馬のけいこ、子供が面白がって、トウサンどこへ行くの、わしゃ知らないおん馬に聞いてくれ、ハハのんきだね――と、いうようなものであったが、どうであったか。たしか、のんき節といったコミッソングである。
 北原保雄『しっくりこない日本語』(小学館新書、本体七六〇円)では、
 〈「おとうさん」「おかあさん」は、「父」「母」の尊敬語で、子どもが自分の父親や母親を高めていう言葉です。ですから見も知らぬ他人が「おとうさん」と呼ぶのは、本来誤りです。気分のすぐれないとき、イライラしているときなどに、店員に「おとうさん、こっちの方がお似合いですよ」などと言われても、「こんな店で買うものか」と思ってしまうのも分からないではありません。しかし、それでは、店員は何と呼べばよいのでしょうか。店に来たお客なのですから、「お客さん」と呼べばいいでしょう。〉(本書より)
 「バカヤロー!! お前にお父さんと呼ばれる筋合いはない!!」と烈火したのは、娘とつきあっている彼氏が結婚も了承していないのに「おとうさん」と、呼ばれたことに父親として頭にきたのであったのだろう。
 〈日本語は、距離の近い、親しい間では、相手のことを「あなた」「君」「お前」などと二人称代名詞で呼びますが、親しくない、距離を置くべき間柄、尊敬すべき目上の相手には「社長」「課長」「先生」など役職名で呼びます。〉(本書より)
 学校の先生が、先生と呼ばれたといって「先生と呼ばれるほど馬鹿じゃあない」、と怒ったとか。先生という呼び方ほど便利なことはない。先生と呼んでいれば間違いないだろう。先生と呼ばないと怒る人もいたとか。そーだ、親父のことを先生と呼べばいいかもしれない。







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