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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」③
No.3475 ・ 2020年12月12日




■「アベ=スガ政権」が発足して早々に、日本学術会議の任命拒否問題が国会で追及されている。この政権が「アベ政治」の延長線上に発症した悪性腫瘍であることを考えれば、こうした問題が露呈することは十分予想できたし、何も驚くには当たらない。病根はすでに安倍政権の時代に巣くっていたからだ。
 本質看取すれば、今回の任命拒否の事態は、政権に批判的な意見や思想をもつ人物を事前に洗い出し、これを政策提言のための組織メンバーから排除したのだということがすぐ分かる。政権が特に神経を尖らせていたのが、安保関連法に関して批判的な姿勢をとる推薦メンバーだったことを考えれば、安倍政権下で成立したこの違憲性の高い法制が、「アベ=スガ政権」においても身体内に突き刺さった棘のように時おり疼きだす生傷であることを如実に物語る。
 これがほんとうに権力の腐敗いがいの何物でもないと私が思うのは、任命を拒否した本音の理由を隠しておき、捏造したまったく別の言い訳をそれにすり替え、整合性が破綻しているにもかかわらず、官邸側の本心だけは絶対に認めようとしない安倍政権時からずっと一貫する国会でのトートロジカルな幼児的答弁姿勢である。
 たかが言葉の問題なのではない。警察権力の行き過ぎた濫用ともいえる今回の措置を、別の理由で粉飾することにより、多様性実現のための制度改革だなどという強弁がまかり通るなら、それは政策判断の正否を問うはるか以前の問題であり、嘘をついている政府を野放しにするという文字通りの“政治的暴力”を容認する結果になるからだ。
 端的にいって彼らのこうした手法は、悪意のファシズムに他ならない。悪意ある本心を抱きながら、表向きは大衆に受けのよいラバーマスクを被り、実際にやることといえば敵とみなした個々人への無言のしかも違法な攻撃。これを国家による対個人テロと呼ばずして何というか。それは、放置すればまちがいなく化膿する浸食性のどす黒い傷なのである。
(つづく)







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