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評者◆秋竜山
良書のある環境で人間形成を、の巻
No.3473 ・ 2020年11月28日




■著名人などの本棚が雑誌などのグラビアに、本人をバックにうつし出されてある。これは、かなり人気のある企画であると思う。なぜならば、その本棚にどのような本が並べられているかわかるからだ。かなり計算ずみに置かれてあることがすぐわかる場合もある。そうかと思うと、気にもしないで並べられてある。見るほうとしてはそれが面白い。虫めがねでくまなく眺める。かくしたつもりの本がチラッとわかったりする。そこが面白いのである。その人物の性格のようなものをかい間見ることができる。そういうことが目的で企画されたものか? 池澤夏樹『知の仕事術』(インターナショナル新書、本体七四〇円)では、
 〈ストックの読書とフローの読書ということをずいぶん前から意識してきた。自分と関わる本を二つに分ける。一方はずっと長い間、ひょっとしたら死ぬまで、置いておく不変のストックである本。もう一方は買うかもらうかして、読まれて(あるいは読まれないまま)次の読者のところへ流れてゆくフローの本。一般的に本というと、すぐ「蔵書」という言葉が出てきて、ストックになりがちである。多くの作家が膨大な蔵書が並ぶ本棚の前で写真が撮られてきた。冒頭に書いたように、ぼくは他人を自分の仕事場に入れない(しかし他人の本棚の写真を見ると、ついそこに俺の本はないかなと探してしまうから現金なものだ)。〉(本書より)
 実に正直だと思う。みんな、そんなものである。自分の本があるかもしれないという期待を持って探しているのかもしれない。見つけた時は、うれしいはずである。自分の本棚にどのような本が並べられているか、若い内は頭の中に入っているものだが、だんだんとそれもわからなくなってしまうものである。それも本棚全体にどのような本が置かれてあるか、わからなくなってしまったら、どーしましょうか。その本を処分するという発想までいたらない。もう、その本はあってないようなものであって、なくてもよいものでもある。なくてもよい本棚が置かれてある。
 昔は百科事典のようなブ厚い本が、玄関をあがると、これみよがしに置かれてあったものであった。もちろん、一度も手にすることなしである。文学全集などもそうであった。本というものは読むためのものではなく飾っておくためのものである。そうわり切ってしまえば、何の問題もない。見栄をはるものであったりもする。本当ならエロ本でも並べたいところであるが、そういうわけにもいかないだろう。「あなた!! 読んでもわかるの」と、女房にいわれ、「バカにするな」とどなったものの、本当は全然わからないものである。元々読みたくて買ったものではなく、格好つけるために高い値のするのを無理に求めたものだ。そして、「いいか!! 本というものは、読まなくても本棚に並べておくだけで、読んだことになるものだ」なんて、いったりする。考えてみると、たしかに、そういうものかもしれない。そのためにも、読めもしない外国の書物をズラリと並べて、その中で生活していけば、読んだ気になってくるというものである。良書の置かれてある環境によって、人間ができあがるとしたら、しめたものである。







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