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評者◆秋竜山
「面白い」って、ナンだ?、の巻
No.3472 ・ 2020年11月21日




■佐々木健一『「面白い」のつくりかた』(新潮新書、本体七六〇円)では、面白いことについて。ヒトは面白いことを喜ぶ。と、いうことは面白くないことをきらう。これは、ハッキリしている。本書では、そもそも、「“面白い”って何?」を考えてみる。あらためて面白いということを考えてみると、「そーいえば、今までそんなことを考えてみたことがなかったなァ」と、気づく。「面白いことはないかなァ……」とは、常に頭の中にあるのに、「面白いって何か」なんて考えることはないだろう。ヒマな野郎が、ヒマな奴に「オイ、何か面白いことないか」と、いう。「バカ、そんなことあるわけがないだろう」と、なる。この会話のやりとりは正常である。面白いことがないことで問題はおこらない。ところが、面白いことがあると、いうことは、異常である。つまり、面白いこと、異常さをさがしているということだ。
 〈「そもそも「面白い」って何?」という素朴な疑問です。考えてみれば、「面白い」という言葉は実に曖昧です。例えば、同業者から番組の感想を求められ、なんと言うべきか、答えに困ってしまうような場面でも、「…ああ、面白かったですよ」と言えば、まず問題ありません。恐る恐る感想を求めてきた相手も、その一言を聞けば大概、安堵の表情を浮かべます。打ち合わせや会議でも皆、口々に、「面白い番組にしましょう…」「うーん、もっと面白くならないかなあ…」などと発言したりしています。でも、「面白い」って一体、何なのでしょうか。〉(本書より)
 そのような会議の中で、「面白いことはないか」と、いって考えるだろう。「面白いとは何か」なんて、考えることはない。「面白いとは何か、だって、バカそんなこと考えるヒマはない。そんなこと考えるんだったら、面白いことはないか、を考えろ」と叱られるだろう。「面白いことはないか」と、「面白いとは何か」とは別問題でもあるだろう。
 〈「面白いとは、“差異”と“共感”の両輪である」。“共感”という言葉は、ピンと来るでしょう。最近は巷でもよく「共感が大事」などと盛んに喧伝されています。では、“差異”とは何でしょうか。国語辞書に載る意味としては「違い」ですが、私の場合はもう少し広い意味(概念)として使っています。〉(本書より)
 「面白い」と、いうことを「面黒い」と使ったのは、十返舎一九で、「ヤジキタ」の中に出てくる。「面黒い」と、いう発想には一種の驚きがある。「面黒い」と、いうことは「面白い」ということである。私はナンセンス漫画が専門であると思っているが、つまり、ナンセンスというのは、まずは「驚き」である。その驚きの後に笑いがおこる。笑いがおこる前に、「驚き」があるともいえるわけである。大体において笑いは、驚きの後に発生するものだ。ギョッと驚きの後、次の瞬間、アハハハ……、となる。
 そういえば、昔、コメディアンで「びっくりしたな、もうー」というギャグで大人気になり、笑わせた人がいた。つまりは、驚きの後の笑いということだ。「何か、驚くようなことはないかねぇ」と、「何か、面白いことはないかねえ」で、「何か笑えることはないかねえ」と、いうことである。馬鹿馬鹿しくて笑えることばかりの世の中である。笑ってばかりいられないともいえる。







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