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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」②
No.3471 ・ 2020年11月14日




■「アベ政治」とは政治における“悪の体質”のことだ。それは国家権力の悪用いがいの何ものでもなく、政権の利害ただそれだけを駆動原理とし、あらゆる公益的価値の私的独占をつねに画策する。
「アベ政治」というのは単に政治の劣化を指す言葉ではなく、政治における進行性の腐敗そのものであり、その政体機構が反公共的な目的に沿って社会を統御したことで、この国の戦後政治の流れに末期的な病状をもたらした元凶、つまり病原ウイルスのことである。
 安倍晋三前総理の辞任の仕方は、その意味でじつに象徴的だった。
「病気と治療を抱え、大切な政治判断を誤ってはならない」というのが辞任の直接の理由だったが、まさに噴飯ものの弁明だろう。辞任の理由が本当にこの言葉どおりだとしたら、「病気と治療」というごく個人的な事情が、まるごと政治利用されたということだ。そんなに体調が悪いなら、当然、議員も辞めるのかと思ったらそうはならず、本人は辞任後も普通に活動しているようだ。病気の治療に専念すると見せかけるために、“総理大臣辞任”という国家の一大事を作為した疑いが濃厚であり、このデタラメぶりは目を覆うばかりである。
 だから「大切な政治判断を誤ってはならない」との物言いは、自身の判断能力を疑ったものではなく、「アベ政治」をさらに延命させるための「政治判断」を誤ってはならないという、きわめて打算的かつ自己中心的な意味なのだと理解すべきだろう。
 現在の菅政権は、そうした政権与党の内部事情と地続きの政治風土のもとに誕生した、いわば「アベ政治」の傀儡政権である。従って、私は以後、この政権を“アベ=スガ政権”とふたつ一緒くたにして呼ぶことにする。
 “アベ=スガ政権”にもっとも欠如しているもの、それは“正義”というものへの感応性だと思う。やること、なすこと、話すことの一言片句にいたるまで「公」への誠実さが全く感じられないのだ。政権としてこれは致命的なことではないのか。
(つづく)







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