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評者◆秋竜山
仏に関する夢を見ていたら、の巻
No.3468 ・ 2020年10月24日




■落語はオチが生命である。オチがよければ、すべてゆるせるようなものである。と、いうことは、オチが悪かったらすべてゆるされないともいえるだろう。オチは笑いである。なぜ笑いなのか。笑いとは、まず驚きがあり、その驚きの後にくるのが笑いとなる。その笑いである。驚きがなかったら笑いはうまれないだろう。ナンセンスの世界であるともいえる。そして、マンガ。マンガもオチを必要とする。必ずしもオチは必要ではないのではないか。なんてことをいった人もいたが、いいオチができないと、そんなことをいいはじめる。だから、あまり真にうけることはできない。マンガ家はオチで悩む。いいオチがうかばない時は、どうしたらよいか。どうすることもできないのだ。そこで、考えだされたのは、いいオチができない。そんな時、「夢だった」と、してしまうことだ。夢にしてしまえば、それなりのオチになってしまう。読者はズッコける。夢中になって最後までたどりつく。そして、いよいよどのようなオチだろうと期待すると、「夢だった」と、いうことになってしまうのだから、頭にきてしまうというものだ。「馬鹿にするな」と、一人でどなったところで、どうすることもできないだろう。夢で逃げる。夢で逃げられる。作者と読者の追いかけっこか。
 末木文美士『日本の思想をよむ』(角川ソフィア文庫、本体九六〇円)では、〈明恵「夢記」〉を取り上げている。
 〈真言密教と華厳教学を学んだのち、世俗を避け高山寺で半生を送った明恵。十代から四十年にわたって書き綴られた夢の記録を遺した。〉(本書より)
 明恵上人といえば夢の上人であるともいえるだろう。
 〈明恵はまた、見た夢をいちいち記録に残した「夢記」でも知られる。夢は現代では抑圧された無意識の表現などと解釈されるが、もともとはこの世界を超えた神仏の顕現する通路として重要なものであった。明恵と同い年の親鸞も、六角堂に参籠して、夢のお告げにもとづいて人生の最大の転機を決断している。〉(本書より)
 私は、ちょっと夢の見過ぎではないだろうか。昼寝でウトウトしたと思ったら、もう夢を見てしまう。夜ともなれば、一晩中夢ばかりみている。いい夢だったらいいが、悪い夢だったら地獄である。悪い夢を見た後は、救いようのない眠れない夜となってしまう。〈夢は現代では抑圧された無意識の表現などと解釈されるが〉と、いうことになれば、私の悪い夢(怖い夢)は、それにあてはまるものだろうか。
 〈それにしても、明恵ほど几帳面な夢を記した人は他にいない。その夢の多くは仏に関するもので、夢が仏に近づくための確かな手立てとみなされていたことが知られる。〉(本書より)
 私は仏に関する夢など一度も見ない。もし見ていたら、また別の人生を歩むことになっただろうに。昔、ある人が夢の話におよんで、彼は、枕元に帳面を置き、夢を見たら、その夢をどんどんメモしたという。すると彼はそれと共にどんどんやせていったとのこと。怖いですねえ……で、その話は終わったのであった。怖いからメモするのはやめてしまったのかどうかも聞かなかった。明恵上人は夢をメモしただろう。それで、やせてしまったとは言っていない。明恵上人の夢は一般人とは違う尊い夢であったのだろう。〈夢の中には、性的な生々しさを伴なうもの〉もあったという。どんな……?







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