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評者◆添田馨
現代権力論――病原ウイルスとしての「アベ政治」①
No.3467 ・ 2020年10月17日




■第二次安倍政権が終焉した。しかし、まったく何の感慨もない。同政権をともに支えた官房長官の地位にあった人物が新しく総理の座に就いた。その流れをみても、私は“安倍政権”はまだ終わっていないと考えるべきだと思う。つまり「アベ政治」はこれからも続くと見なければならない。
 この政権の変移のようすは、新型コロナウイルスにも比すべき病原ウイルスにその振る舞いかたが極めてよく似ている。例えば武漢型からヨーロッパやアメリカ型に新型コロナウイルスが変異したように、今回の政権交代はもともと同じウイルスだったものが、その内部で小変異を反復しただけのものだ。「アベ政治」という毒素はそのまま継承され、ひょっとして一層強化された可能性すらある。
 「アベ政治」のもたらした社会的損傷は甚大であった。その理由はこれと同タイプの政治勢力が過去に見当たらなかったため、対処法が分からなかったからだ。つまり彼らは新型ウイルスだったというわけだ。
 免疫のない新型への対処には薬を使うしかない。薬は抗ウイルス薬、治療薬、ワクチンの三種類。
 二〇一五年の安保関連法制のとき、私たちは峻拒すべく国会前での直接行動にでた。そのとき、私たちは“抗ウイルス薬”だった。翌年の参議院選挙のとき、改憲勢力三分の二以上の議席確保を阻止すべく、私たちは投票を呼びかけた。そのとき、私たちは進んで「アベ政治」の“治療薬”たらんとした。
 結果はいずれも敗北に終わった。抗ウイルス薬も治療薬もいっときの武器にはなったが、相手勢力を無力化するまでには至らなかったのだ。
 「アベ政治」は人から人に際限なく感染する病原ウイルスだ。完全に撲滅するにはワクチンに相当する何かがどうしても必要だ。「アベ政治」以後をビジョン化するなら、それがイメージできなくてはならない。
 「アベ政治を許さない」――安倍氏が総理を辞任したら、この標語は役目を終えるのかと思っていたが、ぜんぜんそんなことはなさそうだ。
(つづく)







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