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評者◆編集部
こどもの本棚
No.3465 ・ 2020年09月26日




みんなのカタカナ ハロウィン(?)のなぞ
▼ゆかいなことば つたえあいましょうがっこう トソックオマトソート! ▼宮下すずか 作/市居みか 絵
 酷暑の夏もしだいに影をひそめ、秋の気配が遠近に顔をのぞかせる季節になってきました。スーパーなどにはハロウィン・グッズも並び始めています。今年、コロナ禍でのハロウィン・パーティーは、いったいどんなふうになるのかな?
 そんな季節にピッタリの一冊が本書です。ねずみのニタくんからまいこんだ招待状には、「トソックオマトソート!」「10月31日の ごご 2じから、ぼくの うちで ハロウソパーティーを やります」と書いてありました。でも、トソックオマトソート? ハロウソパーティーって、いったいなに?
 パーティーにさそわれたのは、ぞうのメアくん、かばのユマくん、きりんのツマくん、そして幼稚園からずっといっしょの幼馴染トライアングル、つまり、りすのケイちゃんとさるのワカちゃんとうさぎのミウちゃんという、三人寄れば何とやらの三角形です。
 みんなは、つたえあいましょうがっこう一年一組の同級生で、ちょうどカタカナを習っています。でも、「ア」と「マ」、「ソ」と「ン」など、形が似ている字がたくさんあって、担任のシホせんせいからも、「カタカナに 気を つけて 書きましょう」といわれたばかり。
 はてさて、ここにヒントあり、ですね。10月31日、どんな「トソックオマトソート」が開かれるのか、つづきは読んでのお楽しみです。(9・10刊、A5判六四頁・本体一〇〇〇円・くもん出版)
 
 
あの世とこの世の境、みちのくの旅へ
▼みちのく妖怪ツアー――ワークショップ編 ▼佐々木ひとみ・野泉マヤ・堀米薫 作/東京モノノケ 絵
 みちのくは昔話や民話、妖怪譚など口承文芸の原郷であり、民俗学の宝庫でもありますね。秋田・男鹿半島のナマハゲや、『遠野物語』に出てくる座敷わらしや河童をはじめ、鬼婆や泥田坊、雨降り小僧など、じつにたくさんの妖怪が登場します。そんな東北の地に、妖怪の勉強をするために集まった二〇人の子どもたちが、「みちのく妖怪ツアー」にでかけました。この本は、あの世とこの世の境を旅した、そんな子どもたちが妖怪とくりひろげるワークショップのようすをえがいたものです。
 たとえば、天狗の湯。この名前を関した温泉は、じつは全国にありますね。本書の「天狗」は、山間の集落にある共同浴場である天狗の湯に、湯守り体験のワークショップに訪れた小学六年生と弟が体験した、ちょっとこわ~いお話。二人は山道を歩いていて、「あーっはっはっは」と空から降りてきた天狗の来襲を受けるのです……。
 こんなふうに妖怪と遭遇して、ワークショップに参加した子どもたちが次々と行方不明になっていきました。まるでカミカクシにあったように、姿を消していったのです。さて、みんなを助け出すことができるのか……。読者のみなさんもこの本で、あの世とこの世の境をさまようことになります。(7・20刊、四六判一六〇頁・本体一四〇〇円・新日本出版社)


みんながそれぞれ革命を起こそう
▼世界を変えるための50の小さな革命 ▼ピエルドメニコ・バッカラリオ/フェデリーコ・タッディア 著/アントンジョナータ・フェッラーリ 絵/上田壮一 日本版監修/有北雅彦 訳
 革命という言葉は、わかったようでいて具体的にイメージしにくく、説明のむずかしいものの一つですね。二〇世紀の革命の経験もあって、今世紀にはあまり使われなくなりました。この本は、そんな革命についてのルールを解き明かした、とても興味津々の内容に満ちています。どんな革命を起こしたいのか、そしてどんな覚悟がいるのか。そんな導入から始まります。
 「ほかの人と違うことを、ちがうやり方でやる。それが、小さな革命を起こすということだ」。
 これには大きくうなずかざるをえません。みんなが、ぞれぞれ、この反逆を実践すれば、革命は起きることを歴史が証明しているからです。妨害や邪魔も入るでしょう。でも、実行あるのみ。身を守るのはたった一つの武器、すなわち、心に秘めた強い信念だと著者はいいます。
 とても大事なのは、本書に挙げられた革命家の五つの特性です。慣習に屈服しない、エコロジーを意識して地球を守る、他人を助け、学び、耳を傾ける、欲張らない、デマや誤情報に惑わされず、好奇心をもって探求し理解すること。革命という言葉を意識しなくとも、これはインディペンデントに生きることの基本となる特性ですね。
 こうして、みんながそれぞれの革命を成し遂げることへと、本書はいざなっていきます。どれひとつとして同じもののない自分の革命をたしかめるノートとして、最大限に有効活用できる一冊です。(6・30刊、四六変型判一九二頁・本体一六〇〇円・太郎次郎社エディタス)
 
 
クマにあらわされた神さまのメッセージ
▼いつも ぎゅっと そばに ▼マックス・ルケード 文/イブ・タルレ 画/女子パウロ会 訳
 動物のクマといえば、大きくて人間には恐ろしい動物と見られがちです。でも神さまは、とってもたいせつな、ほかのだれとも似ていない、たったひとりのきみがいたらいいなと、この絵本の主人公であるクマをおつくりになったのです。本の題名がすべてを物語っています。「なにかしんぱいだな、こまったな、とおもうとき、おもいだしてね、わたしがそばにいるってことを」。絵本のはじめにかかげられたこの言葉は、自分が一人だと孤独に思う人、さびしい人をつつむ、神さまからのメッセージなのです。(5・5刊、28・5cm×22・5cm三二頁・本体一三〇〇円・女子パウロ会)
 
 
絵本を読み終わればあなたもマジシャン
▼りっぱなマジシャンへの道――マジック入門絵本
▼マット・エドモンドソン 文/ギャリー・パーソンズ 絵
 子どもはほんとうに手品が好き。ちょっとしたマジックを自由にあやつることができれば、クラスの人気者になることまちがいなし。学芸会や遠足やお泊まり会はもちろんのこと、授業のあいまの休み時間に手品を見せれば、あなたのまわりに輪ができます。問題は手品のテクニックにあります。友達の驚き具合や反応をたしかめながら、見せ方を考えたり、あらたな技を身につけたり、日夜練習にはげんでいます。そんな子どもたちにぴったりなのが、“家族みんなで楽しめる! 最強のマジック入門絵本”と銘打たれたこの本です。
 とにかくマジックが好きで好きで仕方がない主人公のエリオットは、寝ても覚めてもマジックに夢中です。頭のなかはいつもマジックのことでいっぱい。さもありなん、エリオットのひいひいおじいちゃんは、数々の伝説がまことしやかに語り継がれている、「軌跡の魔術師デクストリーニ」とよばれた世界一のマジシャンで、エリオットはこのひいひいおじいちゃんのような偉大なマジシャンになりたいと、いつも考えていたのです。
 なにかヒントはないだろうかと、家の本棚を眺めていたら、一冊だけマジックの本がありました。タイトルは『消去の呪文、呼び出しの呪文』。むむ、これはマジックの基本中の基本である呪文のことを書いた本ではないか! エリオットが埃っぽい革表紙を開いてみると、本の前半はまっしろ。むむ、この大事な本で、消去の呪文を試してみたのだな。でも、どんな呪文かわからないじゃないか……。
 はてさて、困り果てたエリオット。そんな彼は、本棚のまえで一つのヒントに気づきます。そこから、偉大なマジシャンに出会う旅が始まるのです。
 エリオットの旅を追っていく読者の私たちも、物語のなかでじっさいに手品をすることになります。マジックに必要な材料は、すべてこの絵本に入っています。ワードマジック、スピンマジック、折り紙マジックと、読み終わればあなたもりっぱなマジシャン。物語を楽しみながら、七種の手品がおぼえられる“からくり絵本”を、どうぞ開いてみてください。(17・9・30刊、30・5cm×24cm四二頁・本体二九〇〇円・あすなろ書房)
 
 
むくどりの「われ思う、ゆえに我あり」
▼ぼくは むくどりのヘンリー ▼アレクシス・ディーコン 文/ヴィヴィアン・シュワルツ 絵/青山 南 訳
 ロンドン在住の気鋭絵本作家、アレクシス・ディーコンとヴィヴィアン・シュワルツが贈る、親指ヘンリーの大冒険の世界です。親指の指紋が、かれらの体で、羽がはえて、むくどりの姿で登場します。
 むくどりは、群れをなしてくらしています。誰が誰やら、傍目にはまったく区別がつきません。そんなあるとき、一羽のむくどりが、考えている自分というものに気づくのです。これはまさしく、むくどり版の「われ思う、ゆえにわれあり」ではありませんか。
 そのむくどりこそが、ヘンリーでした。さて、思うわれに気づいたヘンリーは、どんな冒険へと飛び立つのでしょうか。大判の絵本が、読者のみなさんをヘンリーの冒険譚へといざないます。(6・25刊、24・8cm×28・8cm四〇頁・本体一五〇〇円・発行:カクイチ研究所、発売:ぷねうま舎)







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