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評者◆伊達政保
オリンピックの欺瞞性を明らかに――「オリンピック終息宣言」展と、反五輪連統音樂祭・東京五輪獸ありがとうグレイン特別編
No.3465 ・ 2020年09月26日




■この8月の連日の酷暑。新型コロナウィルス流行による一年延期がなければ、東京オリンピック・パラリンピックが行われていたはずだ。新型コロナがなくてもこんな猛暑の中、オリンピックをやろうというのがそもそも間違いなのだが。そうした中、7月にあったはずの開会式予定日に対抗して二つの反オリンピック・イベントが開催された。
 一つは新国立競技場近くのギャラリーで「オリンピック終息宣言」展と題されたアート作品展。呼びかけ人はイケガミアツコ(朗読家)、戸山灰(アーティスト)、櫻川豊敏(画家)、与那覇大智(画家)、山崎春美(作家・音楽家)など多士多才である。そうそうあの東大教授・安冨歩も絵を出品していた。宣言で、オリンピックは、それ自体が「疫病」であると位置付け、スポーツ利権者たちがポケットに入れる札束は、私たちから奪い取った富であり、オリンピックを「終息」させること、この疫病を撲滅させることが、未来を守るための第一歩だとする。またオリンピックは健康な身体を讃え、障害や病気を排除する、優生思想を広めていく思想上のウィルスであり、ゆえにナチスは退廃芸術を排除した。よって不健康かつ不道徳に生きて退廃の側に立ち、オリンピックの終息を宣言するとしている。全く異議なし! オリンピック・レガシー・ツアーというエンディング・パーティーも面白かった。
 二つ目は3月新大久保のライブハウスに続き、新型コロナの影響で9月に閉店することになったライブハウス高円寺グレインで行われたパンク・ファンク・バンド大陽肛門スパパーンの花咲政之輔が主催する反五輪連統音樂祭・東京五輪獸ありがとうグレイン特別編だ。本来はオリンピック開会日に行う大きなイベントだったのだが、開催が一年延期になったことと、ライブハウスでのコロナ感染により緊急事態宣言下で一時ほとんどのライブハウスが自粛休業に追い込まれ経営が成り立たなくなり、営業を再開しても感染防止対策として客数を半減せざるを得ず、よって規模を縮小しオンライン配信も加えて行うことになったという。
 出演者はザ・スターリンのオリジナルドラマーであるイヌイジュンとザ・ラビッツの宮沢正一によるザ・マミイ。高齢者パンクというものもありだなと思わせる。そしてデビュー40周年の「突然段ボール」も変わらない演奏を聴かせてくれた。大陽肛門スパパーンは次のオリンピックでのメダル獲得への期待で押し潰され自殺したオリンピックの犠牲者とも言える東京オリンピック・マラソン銅メダリスト円谷幸吉の有名な遺書を題材としたファンクな新曲で、オリンピックの欺瞞性を明らかにしていた。







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