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評者◆添田馨
現代権力論――権力悪を支えつづけるもの⑦
No.3463 ・ 2020年09月12日
■安倍政権というこのデタラメな政権の息の根を、ここまで長びかせたものの正体が見極められなくてはならない。この政権はなにか自分たちの都合が悪くなると、解散権を行使して衆議院を解散し、総選挙に打って出てそのたび勝利することで、事実上、その政権基盤を切れ目なく維持してきた。選挙で毎回勝ってきた不思議さにも別の意味で興味をひかれるが、それ以前に、総理大臣が自分の裁量で衆議院解散の時期(タイミング)を決定できるといういまの政治システムが、とりわけ大きな役割を果たしてきたというのは、衆目のほぼ一致するところだ。
私はここに、たったひとつの事柄を付け加えたいと思う。それは「解散権」を自由に行使させた挙句、歴史的な長期政権を生んでしまったこの腐りきった政治手法に、適切な名前(レッテル)を貼り付けることである。 なによりもまず、この政権はさまざまな局面で憲法規範を尊重せず、むしろ蔑ろにしてきた(=蔑憲主義)。そして憲法条文の恣意的な解釈のもとに、衆議院解散の時期を「首相の専権事項」として勝手に是認し、その決定権を総理本人にのみ委ねてきた(=宰決主義)。この二重の弊害に対して命名するとすれば、さしずめ“蔑憲宰決主義”というこの全然美しくない、反吐の出るような、口にするのもおぞましい六文字からなる否定的呼称しか私は思い浮かばない。 戦前、中国大陸におけるこの国の軍部の暴走を、議会政治の側が止められなかった背景に、“天皇の統帥権”という強固な壁があったことは広く知られている。シビリアンコントロールの歯止めを嫌う軍部は、この統帥権を盾に自分たちの都合のいいように戦線を拡大していった。 現在、戦前の統帥権に代わってこの解散権が、まったく違う文脈において同様の機能を果たしているように私には見える。解散権をもつことが総理の権力をより強固にし、その独裁化に寄与しているとするならば、これを剥奪する方途こそが真剣に議論されなければならない。(編集部注:八月二十日執筆) (つづく) |
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